自動車用防音・制振材を手がけるイイダ産業、事業広げる「建材向け」で生かす強み
イイダ産業(愛知県稲沢市、飯田耕介社長)が、主力の自動車用防音・制振材の技術を活用し、建材向け事業を広げている。車用を屋根や壁用に転用した制振テープを皮切りに、耐火材や床用遮音マットなどを発売。2020年には材料技術を生かした床用接着剤を開発・投入するなど徐々に製品を拡充している。高い品質や性能が求められる車で培った技術力を強みに、まずは全社に占める建材向け事業の売上高比率を10%(現在7―8%)に引き上げる考えだ。(名古屋・政年佐貴恵)
イイダ産業が「車以外の経営の柱を育てよう」と建材に着目したのは、20年ほど前。車のドアに使われている部品を転用した、金属屋根用の制振テープが最初だ。以来、建材需要が徐々に増え、3年ほど前に「建材プロジェクト」を発足。19年には専用ホームページを立ち上げ本格的な事業拡大に乗り出した。
強みは自動車で培った材料技術と、音や振動の解析技術の両方を持つ点。建材事業を担当する第二営業部の原田和宏次長は「防振や制振の基本的な考え方は同じでノウハウを生かせる」と力を込める。
例えば床下用遮音マットは、防振ゴムと独自形状の吸音材を組み合わせることで、防音効果を高めながら施工時間を従来比で半減した。更に化学系を担当する部隊との連携で、一般的なウレタン系接着剤の1・5倍の伸びを持つ床下用接着剤を開発。施工のバラつきや床材の割れなどを防ぎ、施工時間の短縮にもつなげられる。
最近はコロナ禍でリモートワークが増えるなど家にいる時間が長くなり、生活音を抑えたいとの需要が高まっている。さらに店員と接触する必要のない遠隔店舗などでも、防音は求められる。飯田社長は「車の経験を生かして建材向けに新たな価値を提案したい」と話す。
日刊工業新聞2021年8月27日