国内製造業けん引する半導体、中国・四国地域では景気判断引き下げ要因になった理由
日本経済は製造業を中心に回復の色を強めている。日銀が5日公表した7月の地域経済報告(さくらリポート)は、コロナ禍前の水準回復を見込む声が散見される。国内全9地域のうち、景気判断の据え置きは前回から2地域減の5地域。前回据え置きだった2地域は上方修正した。半導体関連が国内製造業をけん引した。その一方で深刻な半導体不足が、残り2地域の判断引き下げの要因となった。
日銀は北陸と近畿の景気判断を引き上げた。国内外でデジタル関連の需要増を受けて設備投資が進む。設備投資は北海道、東北、北陸、近畿、中国の5地域が判断を引き上げた。総括判断も引き上げた北陸は電子部品、半導体向けの生産用機械が好調に推移する。
半導体向けは、電子部品の関連企業から「既往最高の生産水準」(福島)、「能力増強投資を積み増す」(松本)、「過去最高水準の能力増強投資を進める」(京都)といった声が続出した。
半導体関連が製造業をけん引する反面、深刻な半導体不足にある。総括判断を引き下げた中国、四国の2地域のうち、中国は品薄に起因する車両の減産影響を受けた。品薄は今夏に緩和し、今秋以降に「挽回生産をする」(広島)とピークは過ぎつつある。
原材料価格の高騰に関し、建築業界では輸入木材の需給逼迫(ひっぱく)で仕入れ価格が上昇した。「販売価格を前年比2倍に引き上げる予定」(岡山)と一部で価格転嫁が進む。ただ、消費が弱い中で販売価格に転嫁するのは障壁が高く、実施できなければ企業収益が悪化するリスクが高まる。
個人消費は、巣ごもり需要など一部にあった持ち直しに一服感がみられる。九州・沖縄など3地域が判断を引き下げた。ワクチン接種の普及による消費活動の回復が期待される。
高齢者の接種が始まってから、「高齢者ツアーの宿泊予約が多少ある」(福島)との声があがる。
ワクチン接種、半導体の需給ギャップ、原材料高が国内景気の浮揚に向け、課題として浮かび上がる。