圧倒的に低い日本の「男性育休」取得、実はコスト削減のチャンス!
SDGs(持続可能な開発目標)は17のゴールと169のターゲットで構成されている。17のゴールは「貧困」「飢餓」「教育」「エネルギー」といった大きなテーマであり、それらの問題を解決する具体的な行動が169のターゲットだ。このターゲットには社会からの要請がまとめられているので、SDGsを経営に取り込む際、参考になる。
新刊書籍『SDGsアクション <ターゲット実践>インプットからアウトプットまで』では、このターゲットに焦点を当てる。取り組み方にルールのないSDGsを、ターゲットから解釈し、企業による実践的な活動に結び付ける。
「活動のヒント SDGsアクション」特集の3回目からは本書の一部を抜粋し、ケーススタディをもとに、ターゲットをより具体的な内容に落とし込み、オリジナルSDGsに仕上げるヒントを探る。
ターゲット5.4
公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供、並びに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する
<ケーススタディ>先行事例を参考に。取り組むポイントは社内調整
知名度の高い小泉進次郎環境相が取得して話題となった男性の育児休業。厚生労働省の「雇用均等基本調査」(2019年度)によると、日本の男性の育休取得率は7.48%と女性の83.0%と比べ、圧倒的に低い。政府は男性の取得率向上を目的に、2020年度から国家公務員の男性職員による原則1カ月以上の育休取得を促す方針を決定した。育休を取得する可能性がある職員は前もって上司に報告し、上司が業務分担を図りながら取得計画を作成する。
中小企業では、すでに育休取得率100%を達成している企業もある。サカタ製作所(新潟県長岡市)は、2017年に子どもが生まれる男性従業員8人中4人が育休を取得したのに対し、2018年は6人中6人全員が育休を取得したという。育休取得前には本人、上司、役員が膝詰めで話し合い、育休スケジュールを調整するほか、会社も給与シミュレーションの結果を提示するなどして安心して取得できるよう促す。同社では常時、誰かが育休中の状態だが、ビジネスに支障はないという。同社は厚労省主催の「イクメン企業アワード2018」の両立支援部門でグランプリを受賞している(日刊工業新聞2020年1月15日付)。
何から手を付けていいかわからない場合は、NPO法人ファザーリング・ジャパン(東京都千代田区)の活動に参加するのも手だ。このNPOは、男性が取得する育休を「産休パパ」(Thank you, Papa)と名付け、企業や個人に対し、男性の育休取得の啓もう活動を行う。総合商社では双日が同NPOと連携しつつ社内での啓発活動を強化した結果、第一子の時は1日しか育休を取らなかった男性社員が、第二子では1カ月取得する事例も出てきている(日刊工業新聞2020年2月21日付)。
同NPOは、他にも育休検討中・取得中の父親が情報交換をする場を設けているほか、父親になる心構えを説く活動なども行っている。社員にこうした場の活用を勧めるのもいいだろう(ファザーリング・ジャパンHP2020年8月15日アクセス)。
社員の育休取得はコスト削減のチャンス
過去の「イクメン企業アワード」の事例集を見ると、男性の育休取得は企業にもメリットをもたらすという。例えば、育休を取得する社員の業務を棚卸しし見える化して社内で共有すれば、ムダな作業を改善でき、大幅なコスト削減につながる可能性がある。そもそも社員1人が休むにも関わらず業務量が変わらないと、残された社員は自らの負担が増え、心から育休取得を祝えなくなる。男性の育休取得はムダな業務を見直すチャンスと捉えれば、前向きに取得を促せるようになる。
(「SDGsアクション <ターゲット実践>インプットからアウトプットまで」より一部抜粋)
新刊の紹介
書名:SDGsアクション <ターゲット実践>インプットからアウトプットまで
著者名:日刊工業新聞社 編、松木喬・松本麻木乃 著
A5判、304頁、2,420円
<販売サイト>
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日刊工業新聞ブックストア
<書籍紹介>
国連加盟国によって採択されたSDGsは、17の目標と169のターゲットで構成されている。本書では、日本企業が取り組みやすいターゲットを取り上げ、企業が実践しやすい具体的な活動を、ターゲットごとに整理。企業規模、産業分野などの垣根を越え、70以上のケーススタディを紹介する。
他社が実際に行っている活動から、SDGsを推進したい企業関係者に具体的なSDGsの取り組みのヒントを与える。