女性が主要顧客の店舗、アバター接客で男性の利用が増えた理由
労働人口の減少で人手不足感が強まっていた接客業。新型コロナウイルスの感染拡大により、感染対策という新たな課題が浮上した。NTTデータは6月、オペレーターの動きと連動するアバター(分身)を介して遠隔地から商品を提案するデジタルストアの実証実験を東急ハンズ渋谷スクランブルスクエア店(東京都渋谷区)で実施。「省人化」と「非対面」に加え、リアル接客にないコミュニケーション手法で利用客から好評を得た。
実証では、紫外線(UV)対策コーナーにアバターが映るモニターを設置。東急ハンズ本社(東京都新宿区)にいるコンシェルジュがアバターとして接客し、モニター前にいる顧客の悩みに応じた商品を提案した。
渋谷スクランブルスクエア店は30代の女性が主要顧客だ。コンシェルジュに話しかける顧客の大半も女性だったが、アバターによる接客では30―40代男性の利用者も多かったという。NTTデータSDDX事業部の小川恭平課長は「店員に話しかける勇気がなかった人もアバターだと抵抗がなくなる。顧客の潜在ニーズを引き出せた」と考察する。実店舗の強みである専門員の知識の豊富さとアバターの気軽さという強みを兼ね備えた方法で接客価値を高めた。
NTTデータによると、デジタル店舗化の課題として、専門員のアドバイスがなければ購入に至らないケースが多いことが挙げられるという。チャットボット(自動応答ソフト)の活用も考えられるが、「事前に定義づけた回答しかできない」(小川課長)との課題もある。商材にもよるが、全ての顧客接点をデジタル化するのではなく、人を介したやりとりも重要になる。
実証では、利用客の性別や年齢層、感情を顔認識で推定する人工知能(AI)技術、会話内容をテキスト化する音声認識技術を用いて、顧客ニーズを把握することもできた。これらのデータを分析し、複数の店舗で共有すれば接客術を向上するだけでなく、マーケティング強化にもつなげられる。
アバター接客は店舗向け以外に、外国人観光客向けの駅や観光地での案内などの用途も見込む。日本発の新たな“おもてなし”が期待できそうだ。【連載・オンラインイベント Ready go】
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