#3
豪州で“バカ売れ”の寝具メーカーが日本市場を最重要視するワケ
連載・睡眠の値段(4)
オーストラリアのコアラ・スリープは店舗を持たずオンライン販売のみで自社独自のマットレスを販売するベンチャーだ。2015年11月の設立からわずか約80日で売上高は100万ドルを超え、初年度末には1400万ドルを達成した。16年度以降は前年度比190%で成長を続けている。日本には17年に初の海外展開先の一つとして参入した。現在は同時に参入した香港やニュージーランドは撤退し、日本を「最重要市場」に位置づけて注力する体制を整えている。なぜ日本の寝具市場を重視するのか。日本法人であるコアラ・スリープ・ジャパンのアダム翔太マーケティングマネージャーに聞いた。(聞き手・葭本隆太)
―日本市場での業績はどのくらいですか。
具体的な売上高は開示できませんが、前月比15%増程度で毎月安定して成長しています。我々は日本市場を最重要視しており、今後も(日本担当の)チームを拡充します。日本国内ではここ1―2年、睡眠の質を上げようとする動きが広がっており、その原動力になりたいと考えています。
―なぜ日本市場を重視するのですか。
参入時に豪州近辺の国々の市場調査を行った結果、日本は先進国の中で最も睡眠時間が短い国と認識し、それを(睡眠の質を高める高品質なマットレスを手頃な価格で提供すれば需要が掴める)チャンスと捉えました。寝具の市場規模を見ても日本の潜在性は他国に比べて高いですし、中産階級がたくさんいるという点も(参入の背景に)あります。高品質な製品を手頃な価格で一般の方に提供するという我々の概念で展開できます。具体的には日本では本当に高品質なマットレスを求めると、30万円程度必要になると認識していますが、我々は最大10万円で提供しています。
実は海外進出の際には中国も調査し、とても潜在性があると感じました。ただ、中国で展開していくには富裕層向けのブランドになる必要があると考え、参入しませんでした。
日本人の睡眠不足:経済協力開発機構(OECD)の統計によると、1日のうち睡眠に費やす平均時間は米国528分、英国508分、フランス513分、スペイン516分、中国542分などに比べて日本は442分と最短水準。また、14年の456分から18年に442分になるなど、年々減少している。>
―「高品質な製品を手頃な価格で」という概念をどのように実現しているのですか。
オンライン専門で販売しているため、他のマットレスメーカーとは異なり、営業の担当者などを置いていません。ショールームも設けていない分、商品そのものにお金が掛けられます。
―オンライン専門だと購入前に触ってみたいという消費者の声に応えられず、販売は難しくないですか。
どんな商品も実際に購入前に目で見て触ってができればいいでしょう。ただ、マットレスは店舗で少し試したくらいでは自分に合っているかはわかりません。1週間―1カ月使うと自分の体に合うように形が変わるからです。我々は120日間試して合わなければ返品できる仕組みを設け、(買ったけど自分には合わなかったといった)リスクが生じない形で注文できるようにしました。
豪州でも我々の前にオンライン専門でマットレスを売るメーカーはいませんでしたが、今ではオンラインで買う習慣が定着しており、競合が20社ほど出てきています。
一方、日本の方々は豪州の方々以上に「触ってみたい」と考える方が多いのは事実です。そこでこれまでに東京と大阪でポップアップストアを展開しました。今後も時期を見て展開したいと考えています。常設店も将来的にはあり得る選択肢ですが、現時点ではオンライン専門として信頼を醸成することに注力します。
―日本市場での課題は。
(豪州などのように)マットレスをオンラインで購入するという形式をより認知していただかなくてはなりません。我々のブランドが信用を獲得する必要もあると思います。そのためにはカスタマーサポートをしっかり積み重ねていくことが大事だと考えています。
―御社のマットレス製品の強みを教えてください。
高反発と低反発の素材を組み合わせて両方のメリットを取り入れています。下部は高反発のポリウレタン。その上に我々が(低反発と高反発素材をブレンドして)独自開発した(ウレタンフォームの)「クラウドセル」を設けています。横になると柔らかいですが沈み込みすぎず、高い通気性も有しています。日本は湿度が高いほか、日本人は硬めが好きな方が多いので、日本向けは高反発層はより硬く、クラウドセルはより通気性を高めています。
―日本では寝具メーカーがホームIoT(モノのインターネット)と連携して睡眠環境改善サービスなどの提供に取り組む事例が出ています。
我々もIoT関連の企業とはオープンに議論していきたいですが、現時点で話があるわけではありません。今後1―2年以内にIoT対応も視野に、新たな製品を販売できるか模索していきたいと考えています。
―そもそもなぜ寝具メーカーとして起業されたのですか。
当時のオーストラリアは寝具の購入体験に20年くらい革新がない状況でした。遠くの店舗に車で運転して買いに行くという形でしたし、値段も高額のものが多かった。ただ、製造にはそこまで費用がかかっておらず、消費者が商品に実際以上の料金を支払っている状況がありました。オンラインで購入できる体制を整えることでそれらを変えようとしました。
【01】パナソニックは30年越し…“睡眠テック”で抜け出すのは誰か(2019年7月8日配信)
【02】吉野家と出会い飛躍、睡眠テックベンチャーの雄が実現したいこと(7月8日配信)
【03】寝具業界は劇的に伸びない…危機感の老舗「ふとんの西川」広げる“相談所”(7月9日配信)
【04】豪州で“バカ売れ”の寝具メーカーが日本市場を最重要視するワケ(7月10日配信)
【05】珈琲で仮眠と街の価値上げる「睡眠カフェ」開設の舞台裏(7月11日配信)
【06】銚子電鉄の“あきらめない経営”支える「究極の宿直室」の正体(7月12日配信)
【07】睡眠研究の権威語る、最高の眠り方と睡眠ビジネスの懸念(7月13日配信)
日本人の睡眠不足をチャンスに
―日本市場での業績はどのくらいですか。
具体的な売上高は開示できませんが、前月比15%増程度で毎月安定して成長しています。我々は日本市場を最重要視しており、今後も(日本担当の)チームを拡充します。日本国内ではここ1―2年、睡眠の質を上げようとする動きが広がっており、その原動力になりたいと考えています。
―なぜ日本市場を重視するのですか。
参入時に豪州近辺の国々の市場調査を行った結果、日本は先進国の中で最も睡眠時間が短い国と認識し、それを(睡眠の質を高める高品質なマットレスを手頃な価格で提供すれば需要が掴める)チャンスと捉えました。寝具の市場規模を見ても日本の潜在性は他国に比べて高いですし、中産階級がたくさんいるという点も(参入の背景に)あります。高品質な製品を手頃な価格で一般の方に提供するという我々の概念で展開できます。具体的には日本では本当に高品質なマットレスを求めると、30万円程度必要になると認識していますが、我々は最大10万円で提供しています。
実は海外進出の際には中国も調査し、とても潜在性があると感じました。ただ、中国で展開していくには富裕層向けのブランドになる必要があると考え、参入しませんでした。
―「高品質な製品を手頃な価格で」という概念をどのように実現しているのですか。
オンライン専門で販売しているため、他のマットレスメーカーとは異なり、営業の担当者などを置いていません。ショールームも設けていない分、商品そのものにお金が掛けられます。
マットレスは店舗で試してもわからない
―オンライン専門だと購入前に触ってみたいという消費者の声に応えられず、販売は難しくないですか。
どんな商品も実際に購入前に目で見て触ってができればいいでしょう。ただ、マットレスは店舗で少し試したくらいでは自分に合っているかはわかりません。1週間―1カ月使うと自分の体に合うように形が変わるからです。我々は120日間試して合わなければ返品できる仕組みを設け、(買ったけど自分には合わなかったといった)リスクが生じない形で注文できるようにしました。
豪州でも我々の前にオンライン専門でマットレスを売るメーカーはいませんでしたが、今ではオンラインで買う習慣が定着しており、競合が20社ほど出てきています。
一方、日本の方々は豪州の方々以上に「触ってみたい」と考える方が多いのは事実です。そこでこれまでに東京と大阪でポップアップストアを展開しました。今後も時期を見て展開したいと考えています。常設店も将来的にはあり得る選択肢ですが、現時点ではオンライン専門として信頼を醸成することに注力します。
―日本市場での課題は。
(豪州などのように)マットレスをオンラインで購入するという形式をより認知していただかなくてはなりません。我々のブランドが信用を獲得する必要もあると思います。そのためにはカスタマーサポートをしっかり積み重ねていくことが大事だと考えています。
IoTとの連携も模索
―御社のマットレス製品の強みを教えてください。
高反発と低反発の素材を組み合わせて両方のメリットを取り入れています。下部は高反発のポリウレタン。その上に我々が(低反発と高反発素材をブレンドして)独自開発した(ウレタンフォームの)「クラウドセル」を設けています。横になると柔らかいですが沈み込みすぎず、高い通気性も有しています。日本は湿度が高いほか、日本人は硬めが好きな方が多いので、日本向けは高反発層はより硬く、クラウドセルはより通気性を高めています。
―日本では寝具メーカーがホームIoT(モノのインターネット)と連携して睡眠環境改善サービスなどの提供に取り組む事例が出ています。
我々もIoT関連の企業とはオープンに議論していきたいですが、現時点で話があるわけではありません。今後1―2年以内にIoT対応も視野に、新たな製品を販売できるか模索していきたいと考えています。
―そもそもなぜ寝具メーカーとして起業されたのですか。
当時のオーストラリアは寝具の購入体験に20年くらい革新がない状況でした。遠くの店舗に車で運転して買いに行くという形でしたし、値段も高額のものが多かった。ただ、製造にはそこまで費用がかかっておらず、消費者が商品に実際以上の料金を支払っている状況がありました。オンラインで購入できる体制を整えることでそれらを変えようとしました。
連載・睡眠の値段
【01】パナソニックは30年越し…“睡眠テック”で抜け出すのは誰か(2019年7月8日配信)
【02】吉野家と出会い飛躍、睡眠テックベンチャーの雄が実現したいこと(7月8日配信)
【03】寝具業界は劇的に伸びない…危機感の老舗「ふとんの西川」広げる“相談所”(7月9日配信)
【04】豪州で“バカ売れ”の寝具メーカーが日本市場を最重要視するワケ(7月10日配信)
【05】珈琲で仮眠と街の価値上げる「睡眠カフェ」開設の舞台裏(7月11日配信)
【06】銚子電鉄の“あきらめない経営”支える「究極の宿直室」の正体(7月12日配信)
【07】睡眠研究の権威語る、最高の眠り方と睡眠ビジネスの懸念(7月13日配信)
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