ニュースイッチ

「博多祇園山笠」いよいよ明日クライマックス。祭を支える老舗の教え

福岡市・石村萬盛堂
「博多祇園山笠」いよいよ明日クライマックス。祭を支える老舗の教え

本店(左)隣りの「廻り止め」は博多の人にはおなじみ

 創業112年目を迎えた菓子メーカーの石村萬盛堂(福岡市博多区、石村善之亮社長、092・291・5090)には、経営の根幹となる“言葉”がいくつも残されている。

 その一つが「花持ちし 人よりよくる 小径かな」。立派な花を持っているからこそ、細い道で人と相対したらそっと譲る気持ちを持ちましょうとの意味を持つ。そんな言葉は「自信と謙譲」を表すものとして代々伝わる。

 その言葉を実践しているのが、2016年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界無形文化遺産に登録された「博多祇園山笠」。博多に夏を告げる祭は、地域とともにある石村萬盛堂にとって切っても切り離せない。本番となる7月の期間中は、本店駐車場が祭のグループの一つ「大黒流(ながれ)」の詰め所となって久しく、祭を支える存在になっている。

 祭のクライマックスの「追い山」では男たちが重さ1トンの山を担ぎ、夜明けの博多の街を勇壮に駆け抜ける。本店に面する道は「廻(まわ)り止め」と呼ばれるゴール地点。本店2階は各流のタイムを計る場所になる。当日の本店は早朝4時から営業し、なじみ客を迎える。

 山笠に欠かせない縁起菓子「祇園饅頭」も石村萬盛堂の看板商品だ。祇園宮の御神紋を付けた祇園饅頭をいただくことで山笠期間中の悪事災難を祓(はら)う博多っ子の習慣になっている。同業者が手がけていたレシピを引き継いだことで、地元の菓子作りの伝統を守っている。

 伝統を守るだけでなく、新商品開発にも動いている。山笠の世界遺産登録を記念した新商品「大黒飴」を1日に限定発売した。博多人形師の中村信喬氏がデザインした大黒さまの絵を使用。2000個のうち末広がりの意味を込め88個限定で大黒さまの素焼き人形を同梱した。新商品を山笠の新たな風物詩として、博多の文化を後世に伝えていく。

【企業概要】
1905年(明38)創業の菓子メーカー。主力商品はマシュマロ生地で黄味あんを包んだ「銘菓鶴乃子」。78年にバレンタインデーのお返しとして3月14日にマシュマロを贈る「マシュマロデー」を考案した。現在、福岡県を中心に九州で和菓子を販売する「石村萬盛堂」と洋菓子を販売する「ボンサンク」などを合わせて路面型店舗約60店、テナント型店舗約30店を展開している。16年6月期の売上高は約58億円。
日刊工業新聞2017年7月13日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
「博多どんたく」と並んで博多の人々にとって大きな意味を持つ博多祇園山笠。特に地元の人々にとっては、地域の結びつきを強める重要な意味を持つ祭りでもあります。  高校時代「山笠があるから帰ります」と早退する同級生の姿を当時、うらやましく感じていました。また社会人になってからも、普段すぐに会って頂ける経営者から「山笠があるけん今の時期のアポは無理」断られたこともあります。そんな「山のぼせ」たちによって、この時期の博多の街は独特の雰囲気に包まれ、山笠の終わりとともに博多の街には本格的な夏が訪れます。 (日刊工業新聞西部支社・高田圭介)

編集部のおすすめ