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マネックス・松本社長、人事部長に30代を抜擢した理由

「僕は毎年一つ年を取るが、社会の平均年齢は0.2才ぐらいしか上昇しない」
 マネックスグループ社長の松本大さん。インターネット黎明(れいめい)期にオンライン証券という、新たなビジネスモデルを生み出した原点は、人と違うことが「個性」と尊重された少年時代に育まれたという。多様性を生かした価値創造力で競い合うこれからの日本-。日本でのダイバーシティは、いまだ女性活用など限定的な取り組みという受け止め方が根強い。同質であることに長らく重きがおかれてきた社会や企業はどう変わっていくべきか。経済産業省の公式メディア「METI Journal」の連載特集「ダイバーシティ2.0」のインタビューから一部抜粋してお届けする。

 -多様な属性の違いを生かし付加価値を生み続けることで企業を強くする-。それがダイバーシティ経営と考えられています。日本は目指す世界に近付いていますか。
 「これからでしょう。阻む壁は多々あるが、その中でも問題だと思うのは日本特有の年功序列制度。中央省庁は最たるものでしょう(笑)。誰しも生まれる年は選べないのに、入省年次でキャリアが決められるなんて、アンフェアだと思いませんか。出身校の方がまだ自分の努力が反映される。社会を変えるきかっけという意味では、例えば課長補佐以上は年次にとらわれず抜擢人事を行うような思い切った改革も必要では。『隗よりより始めよ』でね」

 「実は7月1日付の人事異動で、マネックス証券の人事部長に30代社員を抜擢した。当社は中途採用が多く、社員の平均年齢は40才前後だけれども、思い切って新卒採用2期生の若手を起用した」

 -組織の硬直化のようなものを懸念しているのですか。
 「いや、硬直化というよりも、むしろ若い人の個性や価値観を評価できなくなることを危惧している。企業風土改革もイノベーションも原動力となるのは緊密なコミュニケーションだが、世代が離れるにつれ、コミュニケーションロスが大きくなってくることを実感している」

 「世代の問題は社会の変化や潜在的なニーズを捉えるうえでも重要で当然、ビジネスにも直結する。僕らは毎年一つ年を取るけれど、少子高齢化に伴って、社会全体の単純平均年齢は毎年0・2才ぐらいしか上昇しない。何も策を講じなければ年の差は広がってしまうからね。そういう意味でも若手世代の活躍には大いに期待している」

 -一方で、単に多様な個性を持ち寄るだけでは力にならない。ダイバーシティは「魔法のつえ」ではないのでは。
 「いや、ちょっとだけ『魔法のつえ』かもしれない。金融工学の世界では、単一の資産でも、多様な資産でもパフォーマンスといった出力そのものは変わらないが、リスクは下がる。人材戦略に当てはめてみても、経営リスクを軽減する効果は期待できる。もちろん、それぞれが異なる価値観を持っていることが前提だが、多様な発想は事業が特定分野や市場に偏重したり、経営が暴走する抑止力となり得る。サステイナブル(持続可能)な経営を実現する効果は見いだせるのではないだろうか」
<全文は「METI Journal」でお読みになれます>
                  

【略歴】
松本 大(まつもと・おおき)1963年(昭38)埼玉県生まれ。87年東京大学法学部卒業後、ソロモン・ブラザーズを経て、ゴールドマン・サックスに勤務。94年、当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。99年、ソニーと共同出資でマネックス証券を設立。04年にマネックスグループ株式会社を設立し、以来CEO。東京証券取引所のほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカード、ユーザベースの社外取締役を務める。

 
「METI Journal」
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
インタビューに同席させてもらった。「METI Journal」には今の松本社長を形成した松本少年の事も書かれているのでぜひ。 特に大企業では人事部は最も保守的で、しかも権力を持つケースが多いから厄介。「人事部改革」が競争力に直結する。

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