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メークもAIで。最新活用法とは?

資生堂、スマホで簡単シミュレーション
メークもAIで。最新活用法とは?

ワタシプラス カラーシミュレーション 特設WEBサイトより

 資生堂は、人工知能(AI)技術を使いメークのシミュレーションができるスマートフォンアプリケーション(応用ソフト)「ワタシプラス カラーシミュレーション」の提供を始めた。顔画像と目や口といったパーツの位置を学習させる技術により、画面上で自分の顔のメークの仕上がりを再現することができる。実店舗のように見本品を使って試すことができないネット通販などで消費者の化粧品の色選びや購入などに役立てる。
リアルタイム(動画)でのシミュレーションが可能

日刊工業新聞2017年7月3日



見た目の印象を科学する


 若く、美しく見られたいという見た目の効果を化粧品に求める需要は根強い。だが、化粧が見る人の潜在意識にどのように働きかけて印象を決めるのかは、感覚的で未知な部分が多くメカニズム解明が待たれていた。象を決める要因を特定できれば、新たな化粧品開発や競合他社との差別化につながる。資生堂の最前線を追った。

主観と客観的な現実にズレ


 外見の中でも、顔が印象に与える影響は大きい。人が顔を認知する際、目・鼻・口の正確な配置から顔そのものを検出する一次処理、顔の細かな違いを区別して個々の顔を識別する二次処理を経る。

 脳が目に映った視覚入力を解釈して推測した結果が「現実」だが、主観的現実と客観的事実との間にズレが生じる。化粧はこの知覚特性を利用して顔の色・形・質感を補正することで「かわいい」「大人っぽい」といったさまざまな印象を演出できる。

 「品」のある印象ならファンデーションやチークは肌なじみのいい自然な色みを、「華やか」なら目もと・口もとに色みと光沢感といった化粧を、メーキャップアーティストは経験から感覚的に見いだしてきた。

 なぜ、化粧がこのような効果を発揮するのか。資生堂は、人の目の錯覚「錯視」を検証し、アイメークで目が大きく見える効果を科学的に解明した。
                   

目と眉で錯視が起きる


 大阪大学大学院人間科学研究科の森川和則教授との共同研究で、アイシャドーを塗布した化粧顔の目は素顔の目に比べて面積換算で約10%大きく見えると測定し数値化。さらに眉の角度が1度変化すると目が0・18度変化して認知されると確認した。たれ眉ならたれ目に、つり眉ならつり目に同じ方向にやや傾いて見える。

 資生堂の山南春奈研究員は「目と眉でデルブーフ錯視が起きる」と原因を指摘する。デルブーフ錯視とは、同じ大きさの円で単独円より二重円の方が同化して大きく見える現象だ。

 では、化粧顔の錯覚に男女差は存在するのか。阪大の森川教授らが実験した結果、0・6メートルの観察距離では錯視量に男女差はなかったが、5メートルでは男性の錯視量が女性の2倍以上に増加した。

 森川教授は「女性は他の女性の化粧顔を冷静に見ているが、男性は遠目で見る化粧顔に魅惑されやすい」と分析する。
                

(眉の角度変化による目の角度の錯覚効果。素顔(0度)に対してプラス8度の眉(左)とマイナス8度の眉=資生堂・森川阪大教授提供)

3DCGで再現、「マキアージュ」に応用


 資生堂は3Dコンピューターグラフィックス(CG)技術を用いて化粧顔が作成できる「メーキャップシミュレーションシステム」を開発した。顔情報を数値化した計算式を組み込み、CG顔にさまざまな化粧が再現できる。

 化粧品開発での印象評価試験は同じ条件下で「メーキャップが演出する印象を共通理解することが重要」(大高瞳研究員)。これまでメーキャップアーティストがモデルに化粧を施していたが、人によって化粧方法やモデルの顔が異なり、印象のバラつきが課題だった。

 同システムは20―30代女性のCG平均顔モデルに、従来の画像処理技術では難しかった化粧の色みや質感を再現できるようにした。メーキャップアーティストが感覚的に捉えてきた「みずみずしい」「マット」といった仕上がりも、肌・目元・口元とパーツ別で「バリエーションは無限」(同)に再現できる。

 化粧品ブランド「マキアージュ」の開発に応用したほか、将来は海外での活用も視野に入れる。

日刊工業新聞2016年8月19日「深層断面」から抜粋

松井里奈
松井里奈 Matsui Rina 総合事業局イベント事業部 副部長
最新のAI技術の導入により、写真撮影が不要で、動きながらさまざまな角度(動画)で確認できるアプリになっているそうだ。色々な角度から見られるのは良いと思う。

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