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「コネクテッドな社会に必要なのは愛嬌だ!」

KAIZEN PLATFORM・須藤社長インタビュー
「コネクテッドな社会に必要なのは愛嬌だ!」

KAIZEN PLATFORM・須藤社長

 リクルートの新規事業開発部門で数々の伝説を残し、2013年にウェブサイトの改善を簡単に計画・実行できるサービス「KAIZEN PLATFORM」を立ち上げた須藤憲司氏。今、日本で最も注目される起業家からみえる「コネクテッドな社会」とはどんなものなのか。経済産業省の公式メディア「METI Journal」の連載特集「コネクテッドインダストリーズ」でインタビューが掲載されている。その中から一部抜粋してお届けする。

 ―最近、「これは」という発見はありましたか。
 「資本主義やマネーの仕組みが変わってきていると改めて感じますね。モノを生産することで豊かになる社会が変遷を遂げているということです」

 ―その仕組みとは?
 「モノを生産するということに対して相対的な価値が減っています。GDP(国内総生産)はすでに豊かさを図る指標ではない。例えば、CEO(最高経営責任者)は辞任したが、配車アプリの米ウーバーの企業価値が自動車メーカーを超えている。これが何を意味しているかというと、自動車を作った会社よりも、効率よく有効活用している会社の方にマーケットはお金をつけているわけです。モノを作る価値よりも、その後の循環とか利用とかに価値が移ってきている」

 「CtoC(一般消費者間の取引)」を見ると分かりやすいです。大量に売買が行われているけど、GDPには乗っかっていない。この前、ゴールデンウィーク中にいらないものを、メルカリで大量に売りました。家も綺麗になるし、相手に喜んでもらえるし、良い活動だなって(笑)。モノが生まれるだけではなくて、モノがなくなることでも、実は豊かになる。GDPではそれを捉えられない」

顧客と直接つながる大切さ


 ―変遷した社会と、以前の社会の大きな差はなんでしょう。
 「ソーシャルでコネクテッドされちゃっている、ということだと思います。例えば、食品メーカーで考えると、製品に虫が入っていたらSNSでシェアされて大問題になりますよね。事実とは関係なく会社の評判に関わってしまう。製品を生産してデリバーした後でも責任を担保していかなければならない」

 「つまり、顧客とのコミュニケーションがずっと続いているわけです。売り切りじゃなくて付帯サービスがずっと続く。いかに体験を売るかが重視される社会になっています。『モノを売って、はい終わり』の企業は苦しい」

 ―個人が強くなりすぎると企業にとっては窮屈になるのでは?
 「それを上手く活用していく企業が生き残ると思います。例えば、「DtoC(ダイレクトトゥコンシューマー)」は強いですよね。米国でDollar Shave Clubというカミソリを販売するベンチャー企業が快進撃を見せています。毎月、アプリやメールで通知が来て、今月はカミソリを送るか送らないかが選べます。その時に、一緒にヘアジェルはどうですか?おむつはどうですか?ウエットティッシュはどうですか?と勧めてきて、カミソリは要らないけどウエットティッシュは欲しい時があるじゃないですか。店頭での購買ではなくても、顧客と常にコネクテッドしてるから、いつでも販促・広告ができるわけです」

 「顧客とダイレクトにつながっていると、一人ひとりに対していろいろな仕掛けを投じることができますよね。例えばグーグルとフェイスブックだと、どちらがコネクテッドか。グーグルのサービスはログインしなくても使えて、フェイスブックのサービスは全てログインしないと使えないですよね。フェイスブックは『誰が、何を、いつ、どこで、どうやって』という、サービスを利用しているユーザーの細かな情報が分かります」

 「コネクテッドじゃないと、たくさんのお客がきているのに誰が何をしているのかが分からない。もったいないでしょう。これからコスト構造がさらに変わっていって、ドローンで商品が運べる、3Dプリンターで製品を作れるとなった時に、さらに顧客体験に価値が置かれるようになります。コネクテッドな会社と、そうでない会社は、絶望的な差が付くと思います」

倫理性が重視される


 ―ではコネクテッドになってくる社会の中で、どういう人材を育てて行くべきでしょうか。
 「今は転換期なので課題解決よりも課題設定ができる人が重要です。難しいのは、今からその教育をしていて間に合うのかどうか。しかも、時間が経つと今度は課題解決できる人材が必要になってくるかもしれない。こうすればいいという教育のパターンはないと思います」

 「ただベーシックなところはこれから先もっと重要になってくる。コミュニケーションをしっかりとれるとか、人に親切にできるかとか。コネクテッドな社会になるということは、どんどん会社や組織の中が顧客に対して透明になっていきます。そうすると、嫌なやつってすぐに排除されますよね。『あの社員やばいよ』って(笑)。コネクテッドな社会って、倫理性とか性格の良さっていうのが、もっと重視されてくるでしょうね」
 
 ―須藤さんもそこは意識しているんですか。
 「やっぱり愛嬌がないと話を聞いてもらえないですよね。可愛がられないと。能力とか頭の良さとかよりも、優しさとか愛嬌さとかが、コネクテッドな社会になってしまっているからこそ重要になる。正しいことだけ言ってる奴って嫌じゃないですか(笑)。コネクテッドな社会を乗り切る知恵は愛嬌だと思っています」
<全文は「METI Journal」でお読みになれます>
                      

【略歴】
須藤憲司(すどう・けんじ)1980年生まれ。2003年に早稲田大学を卒業後、リクルートに入社。マーケティング部門、新規事業開発部門を経て、アドオプティマイゼーション推進室を立ち上げ、リクルートマーケティングパートナーズ執行役員として活躍。2013年にKaizen Platform, Inc.を米国で創業。現在はサンフランシスコと東京の2拠点で事業を展開。すでに大手企業250社、40カ国3,000アカウントの利用がある。

「METI Journal」
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
発見することが好きというスドケンさん(須藤社長)。インタビューの最後の最後で「愛嬌」というワードが出てきた。会話の中でもまた新しい発見を見つけていくスドケンさん。ぜひ全文をお読み下さい。

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