クックパッド創業者・佐野氏ら気鋭のアントレプレーナーたちが語る『真剣な幸福論』

「公益資本主義」イベント。佐野(クックパッド)×柳澤(カヤック)×青野(サイボウズ)×森川(C Channel)=パート3

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 最後のパート3は仕事や生活、そしてどうすれば世の中が幸せになっていくのか、議論が広がっていきます。 

 パネル参加者
 ●柳澤大輔カヤックCEO
 ●佐野陽光クックパッド創業者・取締役
 ●青野慶久サイボウズ社長
 ●森川 亮C Channel代表取締役
 ※司会=山口豪志デフタ・パートナーズ

 山口「次は未来の話をぜひして頂きたい。皆さんの会社でこんな事をしていきたいとか、30年後、もしかしたら100年後、みなさんがどうしていたいか」

 森川「そうですね。メディアとは何か。どうしてもビジネスになってしまうと、どうやって儲けるかが基軸になりますよね。メディアというものは本質的には、メッセージを伝える役割で、社会の公器的な部分もある。僕は、世の中を元気にするということは、すなわち元気になるようなメッセージを伝えることだと。世界中の人を応援するとか、いつも笑顔を映すとか、それだけで結構みんなが明るく楽しく生きられるんじゃないかと思うんです」

 「今は批判的なものとかが多く流れているので何か元気を無くしますよね。シンプルにいうと、世界中に笑顔が溢れるような素敵な言葉とか、素敵な人とか、素敵なサービスをバンバン出していくことで人間が元気になる。そのことで人類が進化していくような、そういう社会を作る会社にしたいと思っています」

 青野「サイボウズは、チームワーク溢れる社会を作るということを目指しているので、チームワークにこだわっていきたい。チームワークにこだわると、結構みんな楽しく生きられるんじゃないかと思っています。例えばスポーツで、100メートル走で一位になったらそれはそれで嬉しいですけど、リレーで勝った方が嬉しくないですか?みんなが自分の役割を果たして、貢献して、切磋琢磨して、感謝されて、そこに人間が幸福を感じるツボがあると思う」

「武者小路実篤が『幸福は感謝に宿る』みたいなことをおしゃっていて、貢献だったり感謝だったりを、チームワークとともに広げていくことを中長期的にやる。ただ、これは僕がやりたいことなんです。メンバーに引き継ぎたいとは思っていないんです。なぜかというと、各メンバーで多分違う欲求があると思うので。よく『会社は永続してなんぼ』という話がありますが、僕はちょっと疑ってまして、僕は死んだらサイボウズは解散でいいんじゃいかな、と思ったりしています。次世代の人たちが、次の会社を作ったらいい。うまく分割するなり、引き継ぐなりしてやればいい。そんなことを思いながら勝負してます」

 山口「佐野さんの未来は?」

 佐野「おもしろいな~。すごい本質的なことを突いてきますね。会社が永続するべきか、すごく難しいこと。ほんとは会社はミッションがあって、ミッションを達成したら解散するべきですよね。簡単にいうと。その定義がすごく曖昧なのに、会社にはすごい強い権利が許されている。『法人』ですからね。ほぼ人と同じ権利を認められている変な人格というか」

 「う~ん、面白い。僕はここで悩んでいるんですけどね。僕はクックパッドを始めて、会社という形態にしたのも、ゴールはほんとに、すべての人が日常で料理を楽しんでいる世界にする事なんですよ。当たり前のように料理が生活の中にあって、これって結局、作る人を増やすことにつながっていて、食に対する主体性をみんなで持つことなんですよ。だから食うに困らない人ばかりの社会になると思っていて、すごくいろんなイメージができるんですよね。料理をするようになるだけで。そのミッションを徹底的にやる。世界が100億人になるなら、100億人すべてが当たり前のように料理をしているような世の中にしたい」

 「会社を始める時から、だいたい100年くらいはかかるかなぁ~と思ったんですよね。でも自分は生きてられない。20代で始めても。そうすると何かの組織というか、僕以外の形に宿さないと、達成できないミッションになる。だから会社という形態を選んで、会社は一部の人が所有するものではなくて、パブリックなものにして、みんなが所有しているという風に今は進んでいます。しかし、15年やってきても、ほんとに1%も自分のやりたいことを達成できていないので、このままだと千年かかっても達成できないない状況なんですけど」

 柳澤「今の流れを踏まえる話と、そうでない話、どっちにしようかな、と思って聞いていたんですが(笑)。違う方にいくと、会社に関しては去年、上場して、一つ問われているのは『面白法人』が上場して面白くなくなるんじゃないか、という意見があります。クリエイティブと経営というのは両立するのか?これは、公益資本主義の貢献と利益は両立するのかと?いうこととほぼ同じ問いだと思います。それにチャレンジする権利を頂いたので、これからそれを証明していく」

 「株式市場に株主が参加するという一つの仕組みを使って、面白いことをしていこうというのが中長期的な目標ですね。外からみてもカヤックは面白くないといけないので、面白さを追求している企業の仕組みを考えてみたんです。そしたら、短命ということなんですね。だいたい面白時期は一瞬なんで、『最近、面白くなくなったかも・・』と言われながら、会社を続けるという非常にしんどい戦いなんですね。そう考えると、株主に対して、とんでもなく面白いことを最初にバーンと言ってしまうと、その後ができなくなっちゃうので、徐々にそこはやって行こうと思っています」

 「昨年7月から、200人強の全社員の名刺に人事部という肩書きを入れました。面白いコンテンツを作るために優秀なクリエーターを集めないといけないし、リクルートにちょっと近いんですが、独立した人はどんどん応援している。それをサイトに公開しているので、ある程度出ていってしまう。全員に人事部を付けるだけで、採用意識が高まって、結果的に半年間で採用コストが30%下がるという非常にシンプルで効果的な意味があった。これはどの会社もできると思う」

 「であれば、株主にも採用に協力してもらって、『株主人事部化作戦』ということで、株主の人が採用したら、何か金銭的な対応ができないかを考えました。でも法的に利益供与になってできないということで、鳩サブレを39枚送るという謎のところに着地したわけですけど(笑)。それと、株主専用のSNSがあって、意見交換をしてもらって、その意見などを取り入れていきたい。それも結構難しくて、僕らがいろいろコメントしないといけないんだけど、それもできない。株主平等主義があって。もし発信するなら全部にしなければいけない。可能な仕組みを取り入れながらやっています」

 「長期保有する人に株主優待を多くするということをやっている会社もある。ただ、『本当に長く保有しているのか』がチェックできない。年に2回しか株主名簿が見られないので、そのタイミングで持っていると一応、長期保有しているという判断になるんですけども、それはそれでいいと思うんです。ただ頑張ってくれている株主に対して、『仲間』ということで何か優待を増やしていくことで長く持ってもらいたい」

 「思ったんですけど、配当を無くすというのは、ある種、キャピタルゲインで株主に還元する発想になる。そうすると、株主と一緒に長くやっていこうという考え方と矛盾するんじゃないかと個人的には思い始めている。配当を早いタイミングで出すことをやるべきだろうと。それがカヤックの思想的には正しいのではないか。株主に対して一緒に戦っていく仲間だと思ってもらえるような仕組みを会社として作っていければと思っています」

 「個人的には先ほど社員にブレストをすごくやると話しましたが、鎌倉の地域の活動でもやっているんです。地域のお年寄りから学生さんを集めて、この街をどういう風にしたら面白くなるのか、どんなプロジェクトをやるかというのを月に1回、みんなでブレストしています。3、4年やっているんですけど、どんどん街が好きになって楽しくなっていく。木・金の夜中にやっているカマコンバーというのがあるんですけど、そこに行くと誰かしらいて、街の『たくらみ』があるみたいな雰囲気になっている。その活動を通して分かってきたのは、働く場所を楽しくすると、人生が面白くなると思って面白法人を作りましたけど、住んでいるところも楽しくなってくると、もっと楽しくなる。僕もほんとに、会社も楽しいけど地域も楽しい。どっちも無敵な状態になる。それが分かってたんです」

 「みなさんは住むところを、便利さとかで決めているでしょうけど、住んだ後からでもいいんですけど、ほんとはその街を作っている感覚になるのがいい。そして企業がもっとそれをバックアップすべき。どこに本社があるかは、その会社のビジョンや意味であって、その地域に対して貢献する活動は、本業でも経済合理性あると思うんですよね。そうしたら日本全体が元気になる。いろんな地域に展開していくために、興味のある企業には鎌倉の事例を伝えてさせてもらっている。それが長期的に考えていることです」

 山口「最後に会場に来ている方や、今後、起業だったりとか、会社経営を目指している人に一言コメントを頂きたいと思います」

 柳澤「今日の話をちょっと振り返ったんですけど、森川さんがやろうとしていることって、MTVみたいなものを作るというのは非常にやりがいがある。でもすごく難しいじゃないですか。青野さんがやられている4時に社長が帰る会社は、非常にやりがいはあるけど、すごく難しいじゃないですか。佐野くんもまだやりたいことの1%もできてないと。すごいチャレンジをしているこの人たちに対し、自分の思いも強くなりました」

 佐野「いや~どうすっかなぁ~。何を言おうかなぁ~。最近、僕、すごく悔しいんですよ。あいつですよ。イーロン・マスクですよ。何だかんだ言って、結局、道具なんですね。それをどう使うか。あれが日本から出ていないんですよ。悔しいね。ほとんどの技術とか、そいうものはあるじゃないですか。市場も彼が使う資金ぐらいは日本で集められる。人材、技術者もいる。悔しい。だからやっぱり、いろいろあるけど、ここにいる人の中から何人か、世の中を変える人が出てくると思うんだけど、まず、今ある道具で徹底的に戦う。みんな何かを実現したい、変えたい、良くしたいというのがある。徹底的にやりつつ、その道具を改善していく。日本という環境は面白いと思うんですよ。そいうことが生まれるような土壌を、一緒につくるお爺さんになれたらいいな」

 青野「僕も感想なんですけど、やりたいことをやるのがいいんだな、とすごい思いました。森川さんのこと、すごく楽しみで、あのLINEの社長をこのタイミングで辞めるというのって、信じられなくないですか?普通の資本主義的な考え方だとありえないことだと思うんですよ。今日、お話を聞くと、実は次にやりたいことがあると。それがすごく魅力的で、聞いているだけでもワクワクして、僕でも何かできることないですか?と手を上げたくなる。やりたいことを素直にエネルギッシュにされていて、僕も本当にやりたい事はなんだろう、と心に問うて、それをやるようにしたいです。ありがとうございました」

 森川「個人的にはですね、やっぱり大勢の人を幸せにする概念とか動きが、お金も人も集めると思うんですよ。お金から集めるとか、人から集めるというよりも。世の中にとってプラスになるような動きというか、流れというか、それをどう作るかが、なんだかんだ言って一番大事。本当に思いがある人には、そこに共感して手伝ってくれるとか、協力してくれる人が集まるじゃないですか。ぜひ、世の中における大事なことを考えて、皆さん頑張って欲しいと思います。僕も頑張っていきますので、よろしくお願いします」

 (おわり)

ニュースイッチオリジナル

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明豊
デジタルメディア局
局長

会社とは誰のものか、働くとは何を意味するのか、若い経営者がとても深く考えていることに、日本の未来への期待を感じます。この人たちが30年後、どのようになっているか、何とか自分もそこまで生きて見てみたい。

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