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クックパッド創業者・佐野氏ら気鋭のアントレプレーナーたちが語る企業理念論

「公益資本主義」イベント。佐野(クックパッド)×柳澤(カヤック)×青野(サイボウズ)×森川(C Channel)
クックパッド創業者・佐野氏ら気鋭のアントレプレーナーたちが語る企業理念論

『公益資本主義』アントレプレナー・イニシアチブのキッキオフイベント

 6月1日、今の資本主義に代わる「公益資本主義」のイベントが東京・渋谷公会堂で開催され、その中心的な提唱者である原丈人アライアンス・フォーラム財団代表理事の基調講演のほか、日本を代表するアントレプレナー4人によるパネルディスカッションが行われましした。
 パネル参加者は、
 ●柳澤大輔カヤックCEO
 ●佐野陽光クックパッド創業者・取締役
 ●青野慶久サイボウズ社長
 ●森川 亮C Channel代表取締役
 司会はニュースイッチでファシリテーターを務めるデフタ・パートナーズの山口豪志氏。
 約1時間があっという間に過ぎるほど興味深い内容で、何回かに分けて詳細をお届けします。
 まず最初のテーマは「企業理念について」

 柳澤「僕も去年1年、原さんといろいとご一緒させて頂いて、『公益資本主義』についてはまだ全然勉強不足なんです。経営理念を少しからめて話をしようと思いますが、経営理念の話ってすごく面白くなくなるんですよ。他社の経営理念を聞いていると眠むくなりますから(笑)。いいですかね、こんな感じでしゃべっても。でも僕自身は、実は経営理念オタクで、『経営理念』と検索キーワードにかけると、一番上に『面白法人カヤック』というのが出てきますから」
 
 「他社の経営理念もものすごく研究しています。ただ本当に面白くないので、、会場には経営者の方が多いので、経営理念とは何か?を理解されているかもしれませんが、全体的にいうと、一番の大前提は言葉が大事だ、ということです。言葉がすべての現実を作っているので、言葉を大切にしている企業は、文化や、しっかりしたポジション持っている」

 「言葉が大切だという認識がまず頂点にあって、会社を運営していく過程で、経営理念という指針がないと、判断軸がぐるぐる回ってしまう。そこは経営をやっていくうちに分かるんですけど。最初はまったく経営理念の価値が分からないから、なんとなく『ふ~ん』と思って聞いて頂ければ。僕らの中で最初に生まれた言葉が『面白法人』なんです。普通だと、起業するなら事業を考えると思うんです。こういう事業をやりたいから、だからこういう人を雇おうとか。僕らは事業がまったく決まっていなっかんですね。この仲間たちと一緒に働こうということからスタートして、そこからどんな会社にしよう、という話になっていきました」

 「それで、『面白く働こう』というのを決めて、そこからどんどん考えが広がっていった。まず自分たちがおもしろがれば、会社の人たちもハッピーになるから、それが最高の会社だと。でも、それだけでは世の中にインパクトのない会社になってしまうので、外からみても面白いと言われるようになろうと。それは影響力を持つ、ということなんですけど。力を持ったら、世の中の人をもっと面白く働けるようにする、ということにつながっていく」

 「それ自体を経営理念にしてもいいんですけど、いろいろ調べた結果、経営理念は、事業の内容をもう少し理解できるものじゃないといけない。そして、それを唱えると、戦術が見えてこないといけない。僕は、ソニーミュージックでサラリーマンをやっていたんですけど、あの会社は、『音楽を通して世の中を幸せにする』という感じの経営理念で、それだけで分かるでしょ。『面白く働く』ことを追求するために、どうしたらいいかをもう少し具体論に落とし込んでいって、最終的に『つくる人を増やす』という言葉にたどり着いた」

 「言葉も時代ごとに変わってくるので、何十年も前の経営理念を使っている会社自体がダメなんですけど。誰も覚えられないから。戦術を見えやすくする理由は、サービスを作っている時にユーザーを巻き込んで、ビジネスの選択肢もはっきりわかってくるからです。『つくる人を増やす』であれば、何かを作っている会社なんだ!ということが分かるでしょ。うちの社員は220人中、200人がクリエーターの会社なんで」

 「次は、どうやってつくる人間になっていくか。テクニックの話になってくる。カヤックでは徹底的にブレインストーミングする。脳をブレスト脳にしていく。会社に問題があったら、なかなかつくる側に回れないので、どうやったらこの会社がよくなるかブレストする。1年に2回、全員合宿で8時間ブレストしたりします。そうすると、思考がつくる側になって、楽しくなっていく。そんな一連の流れで、会社の雰囲気が出来上がる、ほら全然面白くないでしょ(笑)そろそろ佐野君にバトンタッチします。佐野君はめったにこういうところ出てこないので。今日も短パンで来ていますから」

 佐野「こんにちは、クックパッドの佐野です。ちなみに、会場のみなさんの中で会社を経営している人はどれだけいます?お~多い。これから起業しよう考えている人?なるほど、ほとんどだ。こういう一方通行で話すのはすごく苦手なんですけど。まず自己紹介ですか。毎日の料理を楽しみにすることで、心からの笑顔を増やしていく、というのがクックパッドです」
 
 「生活の中で料理が楽しみになれば、必ずいい世の中になる。それがある時に分かったんですね。だから、それだけを徹底的にやる会社が世界に一つぐらいあってもいいだろうと。そういう会社を作って経営しています。公益資本主義にからめるとしたら、ひとつ言えるのは、僕みたいな存在が許されているということですね。一応、世の中の仕組みにのっとって企業を経営しているんですけども、たぶん世の中が、そのような社会をすごく求めているんだと思う」

 「僕も資本主義とかマーケットメカニズムが好きなんですよ。すごく。それを否定するものではなく、ただ、何でも人間が作ったものなので、完璧なものはないわけですよ。必ずアップデートが必要。そのバージョンアップが随分遅れているぞ、という感覚はあるわけですね。だから仕組みの方をアップデートしていく必要がる。原さんに会って、いろいろ勉強させてもらって、具体的に原さんが提案されている、議決権を、長期に保有する人にのみに与える形にするとか、すごく理にかなっているし、具体的にできることだと思う」

 「何となくみなさんとシェアしたいのは、多分、世の中、多くの人が分かっているんです。なんかちょっと足りないな、と。クックパッドみたいなのが許されているという事実もあり、仕組みをアップデートしていくのが僕らの世代に課せられた課題なんですよね。今の現状を思いっきり否定するのではなく、僕が原さんを好きなのは、ちゃんと今のルールの中で、戦っているんです。今回、ここに来たもの、その上でルールをもっと良くできないか、という人たちともっと議論して、世の中の仕組みを少しずつ変えていけるようになればいいなと思っています」


 青野「なんか胸一杯ですね。柳澤さんの話も佐野さんの話も。全然関係ないですけど、料理始めたんですよ。一部上場企業の社長で料理作ってるってすごくないですか。3人目の子どもが4カ月前に生まれまして、今、『4時まで社長』で勤務しているんです。4時になったら帰る。木曜日はパパが料理する日と決まっていまして、クックパッドさんを使わせてもらっているんですけど、プレミアム会員じゃない。もっと検索したいんで、それそろ申し込もうかなと」

 「サイボウズという会社は、グループウェアという情報共有ソフトを作る会社で、97年に創業しました。当時、インターネットの技術が出てきて、なんかみんなが楽しく働けるようになるんじゃないかな、という期待があって、最初に興味を持ったのがそこでした。途中で初心を忘れてしまい、M&Aをいっぱいやって、1年半で9社買収して、売上高が4倍になって、8社売却して売り上げが3分の1になりました。上場企業としてあるまじき経営しているんですけど」

 「そこで自分がたどり着いた答えは、みんなが楽しく働ける社会にしたい、チームワークがあふれる社会にしたいということ。特に日本のチームワークの問題や、都会で女性が働けないとか、男性が長時間労働して疲弊しているとか、そいうのを何とか変えたいと思って。4時で帰るのも、『やろうと思ったら短時間でできるよ』ということを示すため。でも、これで事業で負けたらダメなんですよ。サイボウズが他社にやられてしまったら、それみたことか!となってしまうので、実績を上げながら、日本の働き方を変えるチャレンジをしていきたいと思っています」

 森川「C Channel代表の森川です。3月までLINEの代表をしていました。多分この中では一番年上で48歳。いろんなビジネスをしてきたんですが、そろそろ僕もいつ死ぬか分からないので、日本のために一生懸命やろうということで、いろいろ考えたんです」

 「世界をみると、資本主義と民主主義がデファクトになりながら、一方で金持ちの意見ばかり通るようになっていることで社会の構造がちょっと歪んでいるという状況かな、と思います。僕自身は日本のために、教育とか医療とかエネルギーなどをやろうと思って勉強したんです。それで一番手っ取り早いビジネスがメディアでした」

 「社会は政治家と官僚、国民がいて、メディアがあって回っている。その中でも今、メディアの元気がない。毎朝、毎晩流れてくる情報が比較的暗めの話が多くて、とにかく明るいメディアを作って、日本元気にしようと。特に若い人に対して。メディアをビジネスとして考えると、人口分布上、年齢が高い人向けに出した方が、収益が上がるので、若い人が共感するメッセージーを発信するメディアがない。テレビは見ないし、かといってネットにあるかといえばない」

 「まず若い人が共感するメディアを作る、しかもグローバルに持っていって、そこに出ている若い人たちが、活躍すれば、そのままグローバルに出ていける。今、作ろうとしているのは、イメージ的に『MTV』みないなもの。日本のいいところの文化を世界に発信して、日本中を元気にして、世界を明るくしようと思っています」

 ※次回は6月3日に公開予定
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明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
パネラーのみさんはすべて面白いのですが、特にクックパッドの佐野さんはあまりメディアやこういうイベントに参加しないので、今考えていることをダイレクトに聞けて聴講者も満足したのではないか。佐野さんもいろいろと深い部分で悩んでいるのが分かった。それは次回で。

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