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政府が産学官連携で「大学院」、世界最高水準のエリート育成へ

枠を超えた修士・博士一貫の教育課程を編成、すでに70案も
 政府は2018年度に、複数の大学から選抜した学生と教員による博士人材育成プログラム「卓越大学院」を始める。産学官連携で世界最高水準のエリートを育て、文理融合領域や新産業の創出に貢献する領域などで活躍する人材を社会に輩出する。文部科学省の18年度新事業として、概算要求に100億円程度を盛り込む方針だ。

 卓越大学院プログラムでは、既存の研究科や機関の枠を超えた修士・博士一貫教育の教育課程を編成する。ゼロから1を生む“知のプロフェッショナル”を育てる。1件当たりの予算額は数億円。初年度は10数件程度の採択を見込む。

 国内の中核大学が強みの学問分野で連携する。企業、国立研究開発法人、海外大学・研究機関とも共同研究や人事交流などを実施する。優秀な社会人の博士号取得促進や、大学と企業の人事交流を通じた産学連携の強化などが見込める。

 対象領域は文理融合領域などのほか日本が国際的な優位性と卓越性を示している研究分野、世界の学術の多様性確保に貢献できる分野。すでに30校程度から約70件の構想が文科省に寄せられている。

 同プログラムを通じて、企業と大学、研究機関間の人材(ヒト)、研究開発のタネ(モノ)、資金(カネ)の循環を進める。既存の産学連携事業「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」などと連動させ「産業界から大学などへの投資3倍」という目標達成にもつなげる。

 「ソサエティー5・0」の実現に向けて、ビッグデータ(大量データ)や人工知能(AI)活用の基盤として数理・データ科学教育の重要性は高まっている。数理と材料、医療などを融合した知識を持つ専門人材の輩出は、経済界からの期待が大きい。
                 
日刊工業新聞2017年6月30日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
博士教育は専門性に偏った研究室指導、それによる就職先の限定、博士進学率の低迷が課題。今後、これらの課題を解決できる可能性もある。 (日刊工業新聞科学技術部・山本佳世子)

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