原発のくびきから解放されることが電力再編につながる

「2016年度エネルギー白書」関係企業の再編期待にじむ

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火力全面統合に踏み切った勝野中部電社長(左)と広瀬東電HD社長
 2日に閣議決定した「2016年度エネルギー白書」は、政策の見直しに深く踏み込まなかった。原子力発電や再生可能エネルギーなどの電源比率を定めたエネルギー基本計画の見直しが近いためで、今後はそちらが論議の中心になろう。

 一方、今回の白書で最も注目されるのは、エネルギー関係企業の再編への期待を強くにじませたことである。主として欧州で、電力とガスをともに手がける大手企業の誕生や、再生エネに軸足を移した企業などの先進事例を紹介した。

 また日本の電力・ガス大手は欧州の企業に比べて、海外売上高比率や額で著しく見劣りする現状を指摘。国内需要が頭打ちの中で、早期に体制を整えて海外に進出することを促した。

 日本でも昨年は電力の全面自由化、今年はガスの自由化が始まった。制度的な整備が一段落したことから、政府が望ましいと考える将来像を描いたとみることも可能だろう。

 ただ日本の業界の現状からは、かなり遠い未来に思える。東京電力と中部電力による燃料調達・火力発電事業合弁のJERA(東京都中央区)のような例外はあるものの、業界内に大手同士の合従連衡の機運は乏しい。また陸続きの欧州と違い、島国である日本のエネルギー企業にとって、海外進出のハードルは高い。

 電力・ガス改革の目的は、関係企業の競争力を高め、地域独占に依存せずに事業展開できる力をつけることだ。新規参入企業との競争は当然であり、再生可能エネなど将来性の高い分野へのシフトも期待されよう。ただ、今の時点で将来の業界地図は見通せない。

 最も力のあるプレーヤーである既存電力各社は、原発再稼働という重い足カセに苦しんでいる。再稼働が軌道に乗るまでは、大規模投資に及び腰になるのも仕方ないだろう。

 再編や海外進出が具体化するのは、早くとも数年後ではないか。電力・ガス改革を軌道に乗せ、どのプレーヤーが優位に立つかを見極めねばならない。まずは足元を固めることだ。

日刊工業新聞2017年6月5日

COMMENT

 既存電力各社が原発再稼働という重い足かせに苦しんでいる現状を打破するには、結局、原子力部門を独立させて統一し、別形態の会社で運営するのが望ましい。“それは無理”と頭から否定する者は、結局、国の政策とともに歩んだ地域独占時代の“思考”から脱していないのではないか。国は原子力エネルギーの運営シナリオを真剣に検討し国民に提示すべきである。電力の全面自由化、ガスの自由化が始まったが、“原子力発電”のくびきから解放されてはじめて、競争原理が働き、新規参入企業との競争や、新規事業への参入、新規参入企業をまじえた電力各社の自由な合従連衡が始まると言えよう。

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