ニュースイッチ

航空機産業、民需減るも"防需"が下支え

16年度は2年連続で2兆円超え
航空機産業、民需減るも"防需"が下支え

三菱重工が製造し、専用輸送機に積み込まれる「ボーイング787」の主翼(中部国際空港で15年撮影)

 日本航空宇宙工業会は5月29日、2016年度の航空機生産(速報値)の総額が前年度比4・1%減の2兆427億円だったと発表した。民間航空機向け部品が大型機の需要減少で落ち込んだ。ただ、防衛や宇宙分野が底堅く推移し、2年連続で2兆円を超えた。

 16年度の生産額の内訳は民間向けが同10・9%減の1兆1788億円、防衛向けが同12・5%増の5270億円、宇宙分野が同0・3%減の3369億円。会見した吉永泰之会長(SUBARU〈スバル〉社長)は「航空宇宙は経済を活性化する先端技術産業だ。こうした使命を肝に銘じ、産業発展に努める」と述べた。

航空関連各社、今年度は増益の見通し


 造船・重機5社の2018年3月期連結決算業績予想が9日出そろい、全社が営業増益を見込む。三菱重工業は火力発電設備事業で収益が一部回復するほか、商船や開発中の小型旅客機「MRJ」などで損失幅の改善を見通す。IHIは海洋構造物やプロセスプラントといった不採算案件の影響が大幅に解消する。大型案件の採算悪化に苦しんだ各社は、組織再編などの構造改革を推進。再び成長軌道に乗せられるか。今期はその分水嶺となりそうだ。
 
 三菱重工は18年3月期の営業利益を、前期比52・8%増の2300億円に設定した。米ボーイングの大型機減産の影響を受ける航空機の機体部品事業やMRJについて、宮永俊一社長は「全社の今後を左右する重要な事業」と認識。生産性向上やエンジニアの技術力向上などで、早期の収益改善につなげる。

 IHIは前期に営業赤字となった資源・エネルギー・環境と社会基盤・海洋の2セグメントで黒字化を予想する。
 満岡次郎社長は「18年度目標の営業利益率7%は捨てておらず、達成に必要な施策を展開する」と強調。リスクマネジメントを強化し、大型案件の遂行体制を強化する。

 住友重機械工業は低迷していた建設機械事業の回復などを受け、営業利益は前期比5・3%増の510億円を想定。「売上高のアップ分と、各製品群の利益率向上に注力する」(鈴木英夫常務執行役員)ことで目標達成につなげる。

 川崎重工業や三井造船の営業利益は、前期比で2ケタ増を予想する。川重は前期に多額の損失を計上した、船舶海洋部門の回復が大きく貢献する。また、三井造船は海洋開発向けチャーター(傭船)サービスなどが追い風となる。
                   
日刊工業新聞2017年5月10日/30日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
航空機産業は技術的にも、生産現場的にも、防衛向けと民間向けが表裏一体です。一時は「民需」の比率が7割になる時期もありましたが、16年度は6割ほどに下がったようです。ボーイングの大型機減産の影響を、安倍政権下で増額され続けている防衛予算が支えたとも言えます。

編集部のおすすめ