缶コーヒーはガテン系向けだった。デスクに置いてもおしゃれなIT企業向けボス
サントリー食品インターナショナルが4月に発売した「クラフトボス」のキャッチフレーズは“缶コーヒーじゃないボス”。ボスは言うまでもなく、サントリー食品の缶コーヒーブランド。販売数量シェアは日本コカ・コーラのジョージアに次ぎ第2位だ。そのサントリー食品が、自社ブランドをあえて否定するかのような、今回のキャッチフレーズを採用した背景には、缶コーヒー業界が置かれている現実と“新たな挑戦”がある。
クラフトボスの容器は通常の他商品のように缶ではなく、ペットボトル。その意味で“缶コーヒーじゃないボス”は正しい。とはいえ、最近は缶コーヒーでも飲みきりサイズのショート缶以外に、再栓ができるボトル缶の商品が増えている。にもかかわらず、クラフトボスがボトル缶でなくペットボトルにこだわったのは、中身が見えるファッション性を重視したためだ。
缶コーヒー市場はここ10年ほど、ほぼ横ばい。内訳を見ると、ボトル缶の構成比率が増し、ショート缶の販売数量は年々減少している。セブン―イレブンなどコンビニエンスストアが注力する店頭のいれたてコーヒー、スターバックスやタリーズなどカフェチェーン躍進の影響を受けたためだ。
「働き方が変わり、缶コーヒーニーズも多様化している。缶コーヒーの商品も、それに応じて変わらなければならない」。柳井慎一郎執行役員はこう強調する。ショート缶の利用者は体を使うガテン系や外回り営業マンが主で、仕事中のつかの間の一服として愛用するイメージが強かった。だが、現代の勤労者ではパソコンの普及でオフィスワーカーの比率が高まり、仕事場はもっぱら会社の机。長時間パソコンに向かっていることも珍しくない。
クラフトボスが狙う客層は、まさにこうした“新しい時代”のワーカー、特にアプリ開発などIT関連企業の社員だ。IT企業の社員は製造業やサービス業の社員に比べ、1人作業が多く、いったん作業を始めれば何時間でも机に向かうケースが普通。半日から1日近く作業が続くため、コーヒーの消費量は多くなるが、飲み方はショート缶のように「イッキ」ではなく、長時間かけ、少量ずつ飲む姿が主流になる。
こうした観点からクラフトボスは、1本の容量をボトル缶コーヒーの350ミリリットルや430ミリリットルよりさらに多い、500ミリリットルとした。「味や香りも短時間で飲む缶コーヒーとは違うスタイルで調整している」(柳井執行役員)。少量ずつ、回数を分けて飲んでも風味や香りが落ちず、おいしく飲めるよう工夫をこらした。
長時間にわたり少量ずつの飲み方はオフィスで人目に触れる時間が、それだけ長いことになる。中身が見えるペットボトルにしたことでブラックコーヒーの“スタイリッシュな黒色”を強調、カフェチェーンに負けない洗練イメージを訴求する。
(文=編集委員・嶋田歩)
クラフトボスの容器は通常の他商品のように缶ではなく、ペットボトル。その意味で“缶コーヒーじゃないボス”は正しい。とはいえ、最近は缶コーヒーでも飲みきりサイズのショート缶以外に、再栓ができるボトル缶の商品が増えている。にもかかわらず、クラフトボスがボトル缶でなくペットボトルにこだわったのは、中身が見えるファッション性を重視したためだ。
缶コーヒー市場はここ10年ほど、ほぼ横ばい。内訳を見ると、ボトル缶の構成比率が増し、ショート缶の販売数量は年々減少している。セブン―イレブンなどコンビニエンスストアが注力する店頭のいれたてコーヒー、スターバックスやタリーズなどカフェチェーン躍進の影響を受けたためだ。
ニーズも多様化
「働き方が変わり、缶コーヒーニーズも多様化している。缶コーヒーの商品も、それに応じて変わらなければならない」。柳井慎一郎執行役員はこう強調する。ショート缶の利用者は体を使うガテン系や外回り営業マンが主で、仕事中のつかの間の一服として愛用するイメージが強かった。だが、現代の勤労者ではパソコンの普及でオフィスワーカーの比率が高まり、仕事場はもっぱら会社の机。長時間パソコンに向かっていることも珍しくない。
クラフトボスが狙う客層は、まさにこうした“新しい時代”のワーカー、特にアプリ開発などIT関連企業の社員だ。IT企業の社員は製造業やサービス業の社員に比べ、1人作業が多く、いったん作業を始めれば何時間でも机に向かうケースが普通。半日から1日近く作業が続くため、コーヒーの消費量は多くなるが、飲み方はショート缶のように「イッキ」ではなく、長時間かけ、少量ずつ飲む姿が主流になる。
容量500ミリリットル
こうした観点からクラフトボスは、1本の容量をボトル缶コーヒーの350ミリリットルや430ミリリットルよりさらに多い、500ミリリットルとした。「味や香りも短時間で飲む缶コーヒーとは違うスタイルで調整している」(柳井執行役員)。少量ずつ、回数を分けて飲んでも風味や香りが落ちず、おいしく飲めるよう工夫をこらした。
長時間にわたり少量ずつの飲み方はオフィスで人目に触れる時間が、それだけ長いことになる。中身が見えるペットボトルにしたことでブラックコーヒーの“スタイリッシュな黒色”を強調、カフェチェーンに負けない洗練イメージを訴求する。
(文=編集委員・嶋田歩)
日刊工業新聞2017年5月19日