スターバックスはなぜ森林を守るのか。企業とNGOの新しい関係

CI職員が適切なコーヒー豆の栽培方法を農家に教える

 環境NGO(非政府組織)が存在感を高めている。国と国との交渉の場である国際会議で議論を主導することは珍しくなくなった。環境問題を詳細に分析して政策提言をしたり、世界中の機関投資家から支援を受けたりするNGOも存在する。NGOが企業活動の方向性を示す場面も増えた。企業はNGOとどう向き合い、連携すべきなのか、実際のNGOの活動から検証する。

 米国に本部を置くコンサベーション・インターナショナル(CI)の理事には、有名な映画俳優、ボツワナ共和国の現役大統領、ウォルマート前会長らが名を連ねる。900人職員が在籍し、70カ国以上で活動する。世界的なNGOの一つだ。

 1987年の設立から自然保護活動に取り組んできたが、約5年前、方向性を変えた。CIジャパンの日比保史代表は「『自然を守ることは、人間を守ること』と明確にした」という。人間活動の持続のために自然保護に取り組むという考え方を打ち出し、「パートナーシップ」を強化した。

 象徴的なのが、米ディズニーや米スターバックスとの連携だ。両社は南米の森林を守るCIの活動に資金を援助している。特にスターバックスは本業と密接にかかわる。

 現地では、住民が生活のために森林を次々と切り倒していた。そこでCIの職員が、適切なコーヒー豆の栽培方法を農家に教えている。農家は高品質のコーヒー豆の販売で生計を立てられるようになり、森林伐採に頼らなくてもよくなった。スターバックスも品質の良い豆を継続的に調達できる関係を築いた。

 森林保全には社員による植林や自然保護団体への寄付という方法がある一方で、現地に精通したNGOと組むと大きな効果を生むことができる。

 CIジャパンは、日本と海外6カ国で森林保全に取り組むダイキン工業と連携する。きっかけは「エアコンが普及すると電力消費が増え、二酸化炭素(CO2)排出量の増加を招く」という声が欧州市場から寄せられたことだった。

 CO2削減への貢献が森林保全の目的だが、CIとの連携で地域に根ざした産業が育つなど、現地住民の生活支援にもつながっている。「森林保全だけ」なら生まれなかった効果だ。

 浦口あやマネージャーは「場所によって問題が違い、解決策も違う」とNGOの役割を説明する。支援した資金が有効に使われると、企業価値も高まる。

 CIは企業活動の生態系への依存度を測る指針「自然資本プロトコル」の策定に参加し、普及にも取り組む。世界的企業が自然資本への関心を高め、対応を始めている。

 日比代表は「日本企業も自然資本プロトコルに参加してほしい」と呼びかける。NGOとの連携は、世界の潮流を知るきっかけにもなる。

日刊工業新聞2017年2月28日

松木 喬

松木 喬
03月06日
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環境NGOには自然保護活動や企業批判といったイメージがありませんか。海外には企業に働きかけ、企業と連携するNGOが多いです。国際交渉が遅々として進まない中、NGOが森林認証を制度を作るなどルールメーキングをする機会も増えました。3月末までの短い連載ですが、NGOの活動を紹介します。

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