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自動車7社の研究開発投資は2.8兆円。中堅勢は軒並み2ケタ%増

自社の優先順位とトヨタ・日産との協業関係どこまで
自動車7社の研究開発投資は2.8兆円。中堅勢は軒並み2ケタ%増

上段左からスバルの吉永社長、マツダ小飼社長、下段左からスズキの鈴木会長、三菱自の益子社長

 乗用車メーカーが先進技術への先行投資を加速する。2018年3月期は各社が研究開発費を増やす計画。自動車業界は、自動運転やコネクテッドカー(つながる車)などの技術革新の波が押し寄せ、大きな変化の節目にある。異業種を巻き込んだ競争激化も予想される中、将来を見据えた種まきをしつつ競争力を高める。

 18年3月期の乗用車7社の研究開発費は、前期比6・7%増の2兆8560億円となる見通し。マツダSUBARU(スバル)、スズキ三菱自動車が2ケタ%増を計画する。

 「自動車産業はパラダイムシフトが求められており、特に人工知能(AI)や自動運転などの新領域がカギを握る」(豊田章男トヨタ自動車社長)。同社は18年3月期に2期連続の営業減益を見込むものの、研究開発費は同1・2%増と4期連続で1兆円超となる計画。自動運転の安全技術などの開発を推進する。

 各社の開発投資増加の背景には、自動運転やコネクテッドカーなど先進技術を通じた将来の業界構造の変化がある。米グーグルをはじめとする異業種組や、電気自動車(EV)メーカーの米テスラなど新興勢力が台頭し、業界変化のスピードが加速している。今後こうした企業が主導権を握ることで、既存市場が一気に失われる懸念もある。

 日産自動車は今期の研究開発費を、強みの電動技術のほか、自動運転の開発強化などに充てる方針。西川広人社長は今後の電気自動車(EV)市場について「今後1―2年で航続距離が差別化要因ではなくなり、商品の魅力競争に戻る」と予想。電動技術を駆使した商品開発に力を注ぎ、優位性を維持する。

 ホンダも自動運転や次世代環境などの新分野に注力。独自の取り組みに加え、米グーグルとの完全自動運転など他社と共同での研究開発も強化する。

 スバルは18年3月期の研究開発費をEVや運転支援システム「アイサイト」の開発に充てる。吉永泰之社長は「将来投資は抑制せず、優先順位をつけ、やるべきことはやる」としている。
               
日刊工業新聞2017年5月15日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
今期は収益的に不透明な部分が多い中で、各社はコストは抑制したいところだろが、研究開発費はやはり思い切ってやっているという印象。技術の領域がかなり広がってきているので最終的に決済する本社部門は判断が付きにくい。最後は経営トップのセンスと眼力、決断力になる。2ケタ増と言ってもこればかりは絶対額がものをいうので、中堅勢は提携関係をどこまで具体化できるか。日産と三菱自は役割分担を含め早期に踏み込んだ取り組みをスタートさせるだろうが、トヨタと提携しているマツダ、スズキ、スバルは、「言うは易く行うは難し」だろう。

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