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「大学改革」、進めたいけど予算はどうする?

財務省が財政審に論点を提示
「大学改革」、進めたいけど予算はどうする?

慶応大の三田キャンパス

 財務省は、文教、社会資本整備、地方財政の各歳出をめぐる論点をまとめ、財政制度等審議会(榊原定征会長=経団連会長)に提示した。文教予算では、少子化の進行に伴って定員割れが増加傾向にある大学の再編が急務だと指摘している。
 
 数年内に大学進学者数が入学定員を下回ると予測。また、すでに定員割れの大学の中には魅力に乏しい大学が少なからず存在する可能性があるという。大学・学部の連携・統合などの再編や「教育の質」向上に向けた大学改革が急務だと提言している。

 また、大学など高等教育の私費負担の軽減も合わせて論点として示した。家計の負担を軽くすることで入学機会の格差を是正するのが狙い。ただ大学進学は自己投資の側面が強く、公費負担を増やすには国民的合意が必要だ、としている。

 公費を増やす場合も、財源は文教または文教以外の歳出削減で充当するか恒久的な財源確保が必要だと注文をつけた。財源を国債に求める考え方は「赤字国債と変わらず、問題が大きい」としている。
                        

公費助成で早慶戦


 日本の大学の学部生の8割を育成する私立大学。収入の7割が授業料という私立大の経営を少子化が圧迫している。私立大の経常的経費に対する国の補助の割合も1割を切り、国立大とは異なる次元の改革を迫られている。

 1995年度の定員充足率(学生の定員に対する在籍数の割合)は、全410校の96%が1を超えた。しかし15年度は全579校の57%に過ぎない。4割が定員割れだ。

 授業料引き上げによるカバーももはや難しい。さらに学生の都市部集中是正の声を受け、文部科学省は定員超過の学生受け入れに対する罰則を強化した。

 そもそも私立大の経常的経費に対し、国は「私立大学等経常費補助」で支援をしている。しかし補助比率は15年度に9・9%まで落ち込み、ピークの80年代の3割とは段違いに少ない。

 これに異議を唱えるのは日本私立大学団体連合会の会長を務める早稲田大学の鎌田薫総長だ。学生1人の教育に対する国の資金は、国立大が私立大の13倍なのに対し、「社会へ貢献する度合いに10倍以上の開きがあるとは思えない」と、私大への補助の拡充を訴える。

 対して慶応義塾の清家篤塾長は、「独自理念を貫くために、私立大は公費助成に頼りすぎてはいけない」と別意見だ。国立大が授業料の引き上げをし、「国の支援は法人でなく、学生の奨学金を手厚くするのに回すのがいい」と提案する。
日刊工業新聞2017年5月11日の記事を加筆修正
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
大学の未来に向けて、中央教育審議会(文科相の諮問機関)は国公私立の枠を超えた統合や連携の議論に入った。「地域の国立大を中心に大学や自治体、産業界が集まっての人材育成は、文科省事業『地(知)の拠点大学による地方創生推進事業』(COC+)で行われている」(文科省・高等教育局)。大学再編に向けた地ならしになる可能性もある。

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