私大600校は単独で生き残れるのか。国公立との統合論議も

少子化が経営圧迫。国の支援、早慶で意見相違

  • 16
  • 22
 多様な教育理念に基づいて日本の大学の学部生の8割を育成する私立大学。収入の7割が授業料という私立大の経営を少子化が圧迫している。私立大の経常的経費に対する国の補助の割合も1割を切り、国立大とは異なる次元の改革を迫られている。国公私立の枠を超えた統合議論も、ついに走りだした。

 18歳人口は、団塊ジュニア世代が18歳となった1990年代前半には200万人を超えていたが、現在は約120万人に留まる。2030年には約100万人となる見通しだ。

 少子化が見えながら近年、4年制私立大学の数は進学率向上を受けた新設や、短大の転換で増えてきた。収支は学生数と授業料収入が確保されれば問題ない。
              

4割が定員割れ


 1995年度の定員充足率(学生の定員に対する在籍数の割合)は、全410校の96%が1を超えた。しかし15年度は全579校の57%に過ぎない。4割が定員割れだ。

 授業料引き上げによるカバーももはや難しい。さらに学生の都市部集中是正の声を受け、文部科学省は定員超過の学生受け入れに対する罰則を強化した。

 そもそも私立大の経常的経費に対し、国は「私立大学等経常費補助」で支援をしている。しかし補助比率は15年度に9・9%まで落ち込み、ピークの80年代の3割とは段違いに少ない。

 これに異議を唱えるのは日本私立大学団体連合会の会長を務める早稲田大学の鎌田薫総長だ。学生1人の教育に対する国の資金は、国立大が私立大の13倍なのに対し、「社会へ貢献する度合いに10倍以上の開きがあるとは思えない」と、私大への補助の拡充を訴える。
            

「理念を貫くために、公費助成に頼りすぎてはいけない」


 対して慶応義塾の清家篤塾長は、「独自理念を貫くために、私立大は公費助成に頼りすぎてはいけない」と別意見だ。国立大が授業料の引き上げをし、「国の支援は法人でなく、学生の奨学金を手厚くするのに回すのがいい」と提案する。

 文科省の支援には競争的資金によるものもある。転換点となったのは14年開始の「スーパーグローバル大学創成支援」事業だ。1件年間数億円と、大学教育の通常の事業より1ケタ多く、国際化の先進というステータス確保の思惑が渦巻いた。

 採択された37大学のうち私立大は14大学で東洋大学、創価大学、関西学院大学などが食い込んだ。16年度には、私立大の全学研究を後押しする「私立大学研究ブランディング事業」も始まった。

 大学の未来に向けて、中央教育審議会(文科相の諮問機関)は国公私立の枠を超えた統合や連携の議論に入った。「地域の国立大を中心に大学や自治体、産業界が集まっての人材育成は、文科省事業『地(知)の拠点大学による地方創生推進事業』(COC+)で行われている」(文科省・高等教育局)。大学再編に向けた地ならしになる可能性もある。


 この荒波の中、約600の4年制私立大はどのような生き残り戦略を立てるのか―。

<関連記事>
私大600校 生き残り戦略インタビュー一覧


早稲田大学・鎌田薫総長インタビュー


 自由な校風で知られる早稲田大学だが、近年は国際化を含め教育の質向上で意外なほど手間暇をかけている。国立大学との研究競争にも手は抜けない。政府の教育再生実行会議座長も務める鎌田薫総長に、バランスを持ちながら進める大学改革の意識を聞いた。
            

 ―早大を語る際、2012年策定の中長期計画「早稲田ビジョン150」を多用しますね。
 「20年先の目標を掲げるなんて、と当初は不思議がられた。しかし目指す先を示した上での単年度計画が必要だ。この中で収入減に直結する学生数減も、学部の教育の質を上げるために進めるとした。また全学生の海外派遣を掲げ、現在は4割まで増やしてきた」

 ―国際化の実数値は他大学を大きくリードしています。
 「留学生数は約5400人と国内最多で、半分が学部に在籍する。低学年のうちに多様な学生が同じ教室で議論をし、サークル活動をすることは重要だ。約700の大学・機関との交流協定がこれを後押しする」

 ―マンモス大ながら、今やクラスの8割が在籍数50人以下と聞き驚きました。
 「学部横断のリベラルアーツでも、少人数のチュートリアルイングリッシュや、学術的な文章記述での1対1の指導など力を入れている。また教育効果が高いものとして、東日本大震災復興に年延べ1万5000人をボランティアで派遣する活動がある」

 ―研究力は、医学系の存在の有無が影響しない英クアクアリ・シモンズの分野別ランキングが注目だとか。
 「17年3月発表の5領域46分野のうち世界100位以内に入ったのは、スポーツ関係の19位をはじめ9分野となった。領域別に国内をみると人文科学、社会科学・経営学が、ともに東京大学、京都大学に次ぐ3位だ」

 ―理工系は国費が多く投入される国立大に押され気味です。
 「そのため民間資金の活用に注目し、産学連携強化に向けた新棟の建設を決めた。電池ナノ材料やエネルギースマート社会に続く大型プロジェクトを、文理融合で進めたい」

日刊工業新聞2017年4月6日

COMMENT

国の施策や方向性は私立大にとっても重要だ。文科省の再就職問題では早大、慶大、中京大学などが受け入れ先として挙がった。問題は禁じられていた現役職員の就職あっせんを文科省が組織的に行ったことで、大学側に非はないかもしれない。しかし私立大が目立つのは、文科省出身の役員がいる国立大に対し、情報通の人材が不足している状況が一因だったも言える。 (日刊工業新聞科学技術部・山本佳世子)

関連する記事はこちら

特集