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露天のたこ焼きが1000円だと“爆花見”も興ざめ

サービス業の労働生産性について考える
 中国人をはじめとした多くの外国人が、花を目的に来日するようになった。桜だけでなく、藤、ツツジ、アジサイなどの名所を訪れ、ネットに“爆花見”という言葉も登場するほど。単なる“爆買い”ではなく、四季の移ろいを親しむ日本文化に関心を寄せるのは大歓迎だ。

 外国人旅行者が日本の良さの一つに挙げるのが“おもてなし”である。さまざまな店舗やホテルで誰でも要人が受けるような手厚い待遇をチップなしで味わえる。リピーターも着実に増えているという。

 その担い手であるサービス業の労働生産性の低さが、以前から指摘されている。日本は米国に比べて約半分といわれ、政府は成長戦略でサービス業の労働生産性向上を掲げる。

 製造業に比べて労働生産性が低いのは、賃金が低い非正規労働者比率が高く、付加価値の高いサービスを安価に提供できてしまうためだという。言い換えれば、同じ料金を払っても米国よりはるかに人手のかかったサービスが受けられるわけだ。

 解決策はサービス品質に見合った価格の引き上げである。ただ、露店のたこ焼きが1000円にもなったら、藤やツツジも色あせて見えるに違いない。消費者とはわがままなもので、それは外国人も同じかも…

日刊工業新聞2017年5月10日
原直史
原直史 Hara Naofumi
日本のサービス業の労働生産性が低いということがよく言われる。いつもこれは正しい指摘だろうかと首をかしげてしまう。米国で暮らした経験のある人なら同感していただけると思うが、質を問わないのであれば、あの国の生産性は高そうだ。でも、あのサービスで日本人が満足できるだろうか。サービスの質とその対価という観点から、きちんとした議論をしてほしいものだ。

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