トヨタ、18年ぶりWRC参戦。交錯する「モリゾウ」と「章男」
ファンと真摯向き合う姿勢がより鮮明に
トヨタ自動車は世界ラリー選手権(WRC)に今シーズンから18年ぶりに復帰した。このラリー最高峰の大会にトヨタガズーレーシングWRT(ワールドラリーチーム)の名の下、小型車「ヤリスWRC(日本名ヴィッツ)」で参戦。スウェーデンで2月に開かれた第2戦では早くも優勝を飾った。量産車をベースにした改造車両で競うWRC。過酷なレースを通じて、技術力の向上やファン層の拡大、一体感の醸成などにつなげる。
4月上旬。チーム総代表でもある豊田章男社長の姿がフランスにあった。WRCの第4戦の舞台を踏むため、日本から駆けつけた。レーサー「モリゾウ」としても活動する豊田社長は、WRCに熱狂するファンの様子やドライバー、チーム関係者らの息吹を間近で感じた。
「人とクルマを鍛え上げるためには最適な舞台だ」。豊田社長はWRCに再参戦する意義を、こう解説する。トヨタは巨費が必要なフォーミュラ1(F1)へ2002年から参戦するため、99年にWRCから身を引いた経緯がある。そのF1もリーマン・ショックのあおりなどを受けて、09年に撤退した。
F1はサーキットで専用マシンにより雌雄を決する自動車レースの最高峰で、量産車とはかけ離れた次元の戦いになる。一方、WRCは一般道で市販車ベースの改造車両で走行するため、そこで得た知見を量産車へ落とし込みやすい。
トヨタもWRCでは米マイクロソフトをテクノロジー・パートナーに迎え、極限状態で走行するヤリスWRCから取得したデータを解析し、新車開発などに役立てる意向だ。モータースポーツとしてファンに夢や感動を与え、ブランドの人気や知名度を高め、なおかつ豊田社長が提唱する「もっといいクルマづくり」にも直接的に関わってくる。
1月にモンテカルロで第1戦が開幕したWRCの今シーズンは、豪州で開かれる第13戦まで続く。トヨタはWRCで96―99年まで4連覇したトミ・マキネン氏をチーム代表に据え、チーム一丸となってレースに挑んでいる。
マキネン氏と同じフィンランド人のヤリ―マティ・ラトバラ選手とユホ・ハンニネン選手をドライバーに、2台のヤリスWRCで奮闘中だ。
「我々は今シーズンを開発の年と捉えているので、あまり大きな期待を抱かないようにしていた」。マキネン氏はそのように思っていたが、チームは長いブランクを感じさせることなく活躍している。初戦のモンテカルロではラトバラ選手が2位と好発進し、第2戦のスウェーデンでは優勝した。
アルゼンチンでの第5戦終了後のドライバーズランキングはラトバラ選手が2位、ハンニネン選手が10位につけている。マニュファクチャラーズランキングでトヨタは3位だ。まだ中盤戦に入ったばかりだが、復帰シーズンから期待が膨らむ。
豊田社長は4月3日に愛知県豊田市の本社で開いた入社式で、新入社員2151人を前に「よもや『安定した会社に就職をして、自分の将来は安泰』などと思わないでください」と訴えた。
今や日本一の巨大企業となったトヨタへの入社は、大きな会社に就職したという意識が強くなるのも仕方ないことなのかもしれない。
そのような中、大学院を卒業して入社した岩脇彩香さんは「ラリーに参戦しているヤリスを運転してみたい」と目を輝かせた。応用化学を専攻していたという岩脇さんは、学生時代は自動車部に所属し、モータースポーツに親しんだ。
クルマは移動手段でもあり、大企業を運営する中では皆がクルマ好きである必要はないのかもしれないが、「クルマづくりを通じて社会に貢献する」という創業以来の企業理念を掲げるトヨタでは「クルマをもっと好きになってほしい」と社員に呼びかける。
自動車業界の環境変化が激しく、トヨタといえども安泰とはいえない状況の下で、WRCへの挑戦や新入社員の言葉は心強く感じる。
「人とクルマを鍛え上げるためには最適な舞台だ」
4月上旬。チーム総代表でもある豊田章男社長の姿がフランスにあった。WRCの第4戦の舞台を踏むため、日本から駆けつけた。レーサー「モリゾウ」としても活動する豊田社長は、WRCに熱狂するファンの様子やドライバー、チーム関係者らの息吹を間近で感じた。
「人とクルマを鍛え上げるためには最適な舞台だ」。豊田社長はWRCに再参戦する意義を、こう解説する。トヨタは巨費が必要なフォーミュラ1(F1)へ2002年から参戦するため、99年にWRCから身を引いた経緯がある。そのF1もリーマン・ショックのあおりなどを受けて、09年に撤退した。
F1はサーキットで専用マシンにより雌雄を決する自動車レースの最高峰で、量産車とはかけ離れた次元の戦いになる。一方、WRCは一般道で市販車ベースの改造車両で走行するため、そこで得た知見を量産車へ落とし込みやすい。
トヨタもWRCでは米マイクロソフトをテクノロジー・パートナーに迎え、極限状態で走行するヤリスWRCから取得したデータを解析し、新車開発などに役立てる意向だ。モータースポーツとしてファンに夢や感動を与え、ブランドの人気や知名度を高め、なおかつ豊田社長が提唱する「もっといいクルマづくり」にも直接的に関わってくる。
1月にモンテカルロで第1戦が開幕したWRCの今シーズンは、豪州で開かれる第13戦まで続く。トヨタはWRCで96―99年まで4連覇したトミ・マキネン氏をチーム代表に据え、チーム一丸となってレースに挑んでいる。
マキネン氏と同じフィンランド人のヤリ―マティ・ラトバラ選手とユホ・ハンニネン選手をドライバーに、2台のヤリスWRCで奮闘中だ。
「我々は今シーズンを開発の年と捉えているので、あまり大きな期待を抱かないようにしていた」。マキネン氏はそのように思っていたが、チームは長いブランクを感じさせることなく活躍している。初戦のモンテカルロではラトバラ選手が2位と好発進し、第2戦のスウェーデンでは優勝した。
アルゼンチンでの第5戦終了後のドライバーズランキングはラトバラ選手が2位、ハンニネン選手が10位につけている。マニュファクチャラーズランキングでトヨタは3位だ。まだ中盤戦に入ったばかりだが、復帰シーズンから期待が膨らむ。
「自分の将来は安泰と思うな」(豊田社長)
豊田社長は4月3日に愛知県豊田市の本社で開いた入社式で、新入社員2151人を前に「よもや『安定した会社に就職をして、自分の将来は安泰』などと思わないでください」と訴えた。
今や日本一の巨大企業となったトヨタへの入社は、大きな会社に就職したという意識が強くなるのも仕方ないことなのかもしれない。
そのような中、大学院を卒業して入社した岩脇彩香さんは「ラリーに参戦しているヤリスを運転してみたい」と目を輝かせた。応用化学を専攻していたという岩脇さんは、学生時代は自動車部に所属し、モータースポーツに親しんだ。
クルマは移動手段でもあり、大企業を運営する中では皆がクルマ好きである必要はないのかもしれないが、「クルマづくりを通じて社会に貢献する」という創業以来の企業理念を掲げるトヨタでは「クルマをもっと好きになってほしい」と社員に呼びかける。
自動車業界の環境変化が激しく、トヨタといえども安泰とはいえない状況の下で、WRCへの挑戦や新入社員の言葉は心強く感じる。
日刊工業新聞2017年5月5日