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黄砂やPM2.5の襲来で市場が拡大?関心高まる戸建て住宅向け空気清浄システム

パナホーム、住友林業などが機器メーカーなどとコラボ
 パナホームとパナソニックは、住宅事業で連携を深める。2社は空気の質を高める新たな概念の住宅用新空調システム「エアロハス」を、共同で開発した。同技術をパナホームの戸建て住宅で旗艦商品となる「カサート プレミアム」に搭載し、発売した。パナソニックグループの力を融合して、住まいの快適性や省エネ性能といった付加価値の高さを訴求し、競合他社との差別化を狙う。

 「パナホームに赴任し約3年。初めて自身で建てたい商品となった」。パナホームの松下龍二社長はカサート プレミアムの発売に当たり、こう力を込めた。新住宅に搭載したエアロハスは、専用エアコンと換気システムを組み合わせたもの。家全体の設定温度に対して、各部屋の温度を個別に調整しつつ、家中を快適な温度に保てるのが特徴だ。

 パナソニックグループの省エネ温調制御や気流制御、高気密・高断熱設計の各技術を組み合わせ、地熱といった自然の力の利用や各室に温度センサーなどを設置する。家全体の空調の電気代は、一般の全館空調システムと比べて56%削減できるという。

 また、温度制御だけでなく、空気の質も高められる。冬場のトイレや浴室は、急激な温度変化により血圧変動が起こる「ヒートショック」や、微粒子物質(PM)2・5の対策を施している。

 住宅メーカー各社は健康や快適、省エネ、住宅全体でエネルギーの消費と創出の収支をゼロにするネットゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)への対応などをキーワードに、商品力を競い合う。その中でパナホームが差別化するには、今回のエアロハスの認知度を高められるかがカギとなりそうだ。

 パナホームの平澤博士専務執行役員は「展示場で空気の質の良さを感じてもらうことが重要」と説明する。そのため2018年3月期中に、全国100カ所で新住宅を展示する計画だ。40―50代半ばで年収が1000万―2000万円台の世帯を対象に、年間100棟の販売を見込む。

 パナホームは現在、戸建て住宅の販売戸数で業界7位にとどまる。17年8月1日付で、パナソニックの完全子会社となる同社。

 松下パナホーム社長は「人や技術を融合し、新しい付加価値を提案していきたい」と、グループ力の発揮を誓う。今後は、介護事業などを組み合わせ、総合的な住宅ビジネスのモデル提案を進めていく方針だ。

アズビル、戸建て全館空調システムを中核製品に


 アズビルは家じゅうの冷暖房をまかなう全館空調システムの販売でピッチを上げている。高齢化や健康志向を背景に、販売台数がここ数年20%伸びていて、1万台の大台突破も視界にとらえる。

 特定のハウスメーカーとの関係に依存しない全方位の販路で需要を取り込む。持ち前の風量制御技術も生かして、電機メーカーなどとの異業種間競争の勝ち残りを目指す。

 アズビルは一戸建て住宅向け全館空調システム市場で、三菱電機デンソーと競合しており、今後も市場の成長が見込まれている。各社がいずれもハウスメーカーと連携していて、アズビルも住友林業などを通じて同システム「きくばり」を提供している。

 さらに部屋ごとに温度を設定できる可変風量制御(VAV制御)機能を搭載した新システムの拡販も狙う。事業推進部事業開発グループの石川孝志グループマネジャーは「VAV制御により住宅も売りやすくなる」と説明する。

 新システムの実用化を支えたのは、ビルや工場向けに培った制御技術や知見だ。使っていない部屋の冷房停止など、生活スタイルに応じた空調システムを提供し、省エネルギー化につなげる。全館空調をめぐる競争の差別化要素で、ハウスメーカーも顧客に提案しやすい。

 また、屋内の空気清浄にもこだわっている。静電気で空気中の粉じんを取り除く「電子式エアクリーナー」を搭載していて、粒子状物質「PM2・5」にも対応する。空気を1時間に数回きれいにして循環させる仕組みだ。快適な室温管理とともに、健康志向の需要も取り込む。

 エアコンや床暖房が主流の空調分野だが、全館空調システムへの関心は高まる見通し。石川グループマネジャーは「きくばりも伸びるが、まだ(製品・サービスの)柱とは言えない」と指摘する。

 きくばりは、ガス・水道メーターと医薬品製造設備と同じ事業部門で、売り上げ規模は3番目にとどまる。業界をまたいだ競争の同システム市場で7000台を販売しているが、数年以内に1万台を突破した時、きくばりが中核製品に成長したと言えそうだ。
日刊工業新聞2017年4月11日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
近年、戸建て住宅の機密性や断熱性能が高まり、住宅メーカーの競争が省エネ・空調性能に向かいつつあります。住宅自体の空調機能が高まると、空気清浄機や加湿器がいらなくなるかも知れません。住宅メーカーと家電・空調機器メーカーなどとの協業は必然的な流れと言えるでしょう。

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