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女性醸造家が目指した、“一番搾り”のノンアルビール

キリンのノンアルビール「零ICHI」、発売10日で1000万本
 キリンビールが11日に発売したビール風味飲料の戦略商品「キリン零ICHI(ゼロイチ)=写真」が、発売10日間で1000万本(350ミリリットル缶換算)以上を売り上げ、年間販売目標の約2割を達成した。大瓶換算だと約30万ケースに相当する。

 ノンアルコールビールのゼロイチは、主力ビールと同じ「一番搾り製法」を採用。麦汁だけで麦のうまみを引き出し、ビールに近い味と飲み応えが特徴。スーパー店頭と並び、飲食店でも営業で攻勢をかける。

 キリンはノンアルビールで業界のパイオニアだが、後発のアサヒビールやサントリービールの攻勢を受け3位に沈んでいた。ゼロイチの飲食店採用は約1万店に達した。国内3工場で生産している。

開発者は若手女性醸造家


 ゼロイチを開発したのは、酒類技術研究所の妻鳥奈津子氏。一番搾り製法の麦汁を使うと、ビールらしさを持った味の骨格が形成される。しかしノンアルビールにはビールのように「発酵・熟成」工程がないことから、麦汁独特の甘い香りが残る。それがホップの香りと合わさることで、レモンティーのような香りになってしまうことが以前から懸念されていた。

 そこで妻鳥氏は、ビール香味を表現するために麦汁の不要な香りを隠す方法を考案。素材を150種類~200種類ほど評価し、その中から香りを隠せるようなマスキング素材1種類を選抜した。

 他社のノンアルビールは「糖質オフ」や「カロリーオフ」など機能を追求したものが多い。しかしゼロイチは人工甘味料、カラメル色素のような着色料や苦味料などを使わず、ビールに近い飲み応えを追求した。
日刊工業新聞2017年4月24日に加筆
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
妻鳥さんはクラフトビールの開発もしています。ホワイトビールのベースにゆず・山椒を加えた、爽やかなのにスパイシーな味わいです。

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