病院の「スマートベッド」は看護師の負担を減らせるか
パラマウントベッド、現場と開発側の感覚の差を埋める改善続ける
高齢化社会の進展で看護師の負担がますます増えることが予想される。パラマウントベッドは、医療現場が抱える問題に対するソリューション・ビジネスに軸足を移しつつある。
昨夏発売の「スマートベッドシステム」は、IoT(モノのインターネット)の導入により、患者の在不在から、呼吸・心拍・睡眠状態などのデータをリアルタイムで計測・管理し、端末機器を通してナースステーションから監視できるものだ。現在、大手2病院から引き合いがきている。
同社は1947年の創業当初から病院用ベッドの開発を手がけてきた。同社製ベッドでは従来から睡眠や離床などの測定は可能だった。
しかし、体温などの数値データは看護師がパソコンに入力することで管理し、ベッド装着機器とは連動していなかった。このため、緊急のナースコール対応で記入が遅れるなど「ベッドでできることには限界がある」(木村陽祐執行役員)と感じていた。
単なる医療・介護用ベッドの製造販売から、ベッドを基点とする医療・介護現場向けソリューション提供へと事業範囲を広げる必要に迫られた。
13年に「スマートベッドプロジェクト」を発足。開発チームを結成し、社長直轄の特別プロジェクトとして始動させた。同社はシステム部門を持たなかったため、システム開発会社や医療機器メーカーと協業して、同システムを完成させた。
このシステムでは、各患者のベッド横にタブレット端末を、ナースステーションにはフロア内患者を一括で管理するモニターを設置し、ベッドや体温計などの測定器を連携させた。ベッドは既存製品の「メーティスプロシリーズ」を対応させた。
このシステムはマットレス下にあるセンサーが睡眠分析を行い、95%以上の精度で睡眠中か否かを判断する。血糖値や血圧、体温といった患者の体調データを各測定器からベッド横の端末機器に直接かざして登録でき、看護師がデータ入力する手間を省く。
患者個人の行動パターンを認知して、トイレの予測も行う。さらに呼吸や心拍の異常も検知する。看護師の負担を軽減しつつ、患者の安全と看護業務漏れの防止を徹底管理できる。
発売1年ほど前から、長野県佐久市にある総合病院の協力を得て、同病院に試験導入。各科1床ずつ計80床に導入して試験を行い、看護師の意見を取り入れながら改良を行った。
例えば音の問題。「当初は騒音を気にして無音仕様にした」と木村執行役員。ところが、「体温や血糖などを計る際、計測完了音など合図が出ないと測定できたかどうかと不安になる」という声が看護師側から出て、計測完了音を設けるなどの調整を行った。「現場と開発側の感覚の差を埋める上でこうした試験は欠かせなかった」と木村執行役員は語る。
(文=高橋沙世子)
昨夏発売の「スマートベッドシステム」は、IoT(モノのインターネット)の導入により、患者の在不在から、呼吸・心拍・睡眠状態などのデータをリアルタイムで計測・管理し、端末機器を通してナースステーションから監視できるものだ。現在、大手2病院から引き合いがきている。
同社は1947年の創業当初から病院用ベッドの開発を手がけてきた。同社製ベッドでは従来から睡眠や離床などの測定は可能だった。
しかし、体温などの数値データは看護師がパソコンに入力することで管理し、ベッド装着機器とは連動していなかった。このため、緊急のナースコール対応で記入が遅れるなど「ベッドでできることには限界がある」(木村陽祐執行役員)と感じていた。
単なる医療・介護用ベッドの製造販売から、ベッドを基点とする医療・介護現場向けソリューション提供へと事業範囲を広げる必要に迫られた。
13年に「スマートベッドプロジェクト」を発足。開発チームを結成し、社長直轄の特別プロジェクトとして始動させた。同社はシステム部門を持たなかったため、システム開発会社や医療機器メーカーと協業して、同システムを完成させた。
このシステムでは、各患者のベッド横にタブレット端末を、ナースステーションにはフロア内患者を一括で管理するモニターを設置し、ベッドや体温計などの測定器を連携させた。ベッドは既存製品の「メーティスプロシリーズ」を対応させた。
このシステムはマットレス下にあるセンサーが睡眠分析を行い、95%以上の精度で睡眠中か否かを判断する。血糖値や血圧、体温といった患者の体調データを各測定器からベッド横の端末機器に直接かざして登録でき、看護師がデータ入力する手間を省く。
患者個人の行動パターンを認知して、トイレの予測も行う。さらに呼吸や心拍の異常も検知する。看護師の負担を軽減しつつ、患者の安全と看護業務漏れの防止を徹底管理できる。
発売1年ほど前から、長野県佐久市にある総合病院の協力を得て、同病院に試験導入。各科1床ずつ計80床に導入して試験を行い、看護師の意見を取り入れながら改良を行った。
例えば音の問題。「当初は騒音を気にして無音仕様にした」と木村執行役員。ところが、「体温や血糖などを計る際、計測完了音など合図が出ないと測定できたかどうかと不安になる」という声が看護師側から出て、計測完了音を設けるなどの調整を行った。「現場と開発側の感覚の差を埋める上でこうした試験は欠かせなかった」と木村執行役員は語る。
(文=高橋沙世子)
日刊工業新聞2017年4月7日