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人間の社会的違いは何か。「個人が学ぶと学ばざるとの違いである」(福沢諭吉)

“独立自尊”の文化と科学を基にした人間の絆の再構築が国の将来を決める
 以前、当時の村瀬敏郎日本医師会会長から「人を動かすのは理屈じゃなく情だよ」と言われたことがあります。さらに、「人を説得したい時には他の人の言葉を使うと役に立つ」とも言われました。

 理屈や理論だけ述べている人との間はぎくしゃくし互いの心が打ち解けにくくなります。一方、情だけに影響される人間関係も一層の発展は難しい。

 要するに、相手の気持ちに寄り添い、相手にも自分の心を感じてもらえる温かな人間関係をつくると同時に、分かりやすく考え方を説明し理解を得られるようにすることだと思います。

 そして、時には詩も活用できます。以下に示す詩は言葉使いを分かりやすく直してあります。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は育たぬ」 山本五十六

「マジョリティは現在のために、マイノリティは未来のために」 関本忠弘

「鳴かぬなら鳴かぬもまたよしほととぎす」 松下幸之助

「ふりむくなふりむくな後ろには夢がない」 寺山修二


以下詠み人知らず

「人柄のよさと芯の強さ、それに少しばかり粋なところ」 

「親の意見となすびの花は千に一つの無駄もない…咲けば必ず実を結ぶ」

「花の咲かない冬の日は下へ下へと根を伸ばせ」


 「ほととぎす自由自在に聞く里は、酒屋へ三里、豆腐屋へ二里」などは話の中で時々使ってきました。最も多い引用は福沢諭吉の“独立自尊”です。

 『学問のすゝめ』は、「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言えり」との著名な一文で始まり、時が経てば経つほど内容の価値が輝き、まさに、21世紀に入った今日、我々が考え直す方向を示しています。

 人間に違いはないのか。一人ひとりの人間は生理的にも心理的にも個別的で、社会的にも違いが存在します。そして、特に社会的存在としての人間の違いが生じることは、「個人が学ぶと学ばざるとの違いである」と書かれています。

 人は何のために学ぶのか。他人に依らない、国家に依らない、国家は他国に依らない。このことが独立自尊であります。

 高齢化と人口減少が進展し、貧困な政治の下、経済成長に明るい方向を見い出せない今日の日本には、地球環境を含め地球規模での国家連携が必要です。

 政治力、経済力を超え、“独立自尊”を前提とした文化と科学に基づき人間の絆をどう再構築するかがわが国の将来を決定づけます。
(文=河北博文・社会医療法人河北医療財団 河北総合病院理事長)
日刊工業新聞2017年4月7日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
福沢諭吉は「文明論之概略」で、文明を進化させるには知恵だけでなく徳義が大切ということが書かれている。

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