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三菱重工で戦闘機の設計に携わった男、無人飛行機で上昇気流へ

AETアビエーション、原発関連からヘリコプター改修で海外市場にも
三菱重工で戦闘機の設計に携わった男、無人飛行機で上昇気流へ

鬼頭社長の旧知の設計者が集まる

 名古屋市の副都心、金山駅から徒歩15分の場所に、無人航空機の設計とヘリコプターの改修設計を手がける企業がある。2013年設立のAETアビエーション(名古屋市昭和区、鬼頭誠社長)だ。日本原子力研究開発機構宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発中の放射線量分布を測定する無人航空機の試験運用機を設計している。

 東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、将来の原発事故発生後に放射線量の分布を素早く測定する無人航空機の必要性が浮上。研究開発が始まり、13年に試験運用機の設計依頼が来た。

 19年度の実用化を目指しているが、鬼頭社長は「簡単にはいかない」と現状を明かす。JAXAの既存の無人航空機をベースにするが、実際の使用状況を想定し、実用に耐えるように設計する難しさがある。

 設立間もない同社に白羽の矢が立ったのは、鬼頭社長が航空機設計で豊富な経験を持つからだ。1979年に派遣会社に入社し、三菱重工業で戦闘機などの設計に携わる。三菱重工の社員と同じ仕事をし、「必要不可欠な存在と認識されている自負はあった」と振り返る。だが、派遣会社との方針の違いにより、95年に退職する。

 同年に別の派遣会社の社長に就任し、人脈を生かして仕事を獲得していく。ヘリの機器を載せ替えるなどの改修設計の仕事にも取り組み始める。ところが、会社の経営権争いが勃発し、13年に社長職を解任された。

 そこで同年、信頼する設計者を集め、AETアビエーションを立ち上げた。ヘリの改修設計は年間30―40機の仕事があるが、海外の仕事も獲得することを狙っている。

 手始めに韓国の市場を調査した。日本より人口比の民間ヘリの数は少ないものの、災害救助や緊急医療用の需要があまり高くないことがわかった。鬼頭社長は「他の国を調査したい」と次の一手を模索する。
(文=名古屋・戸村智幸)
日刊工業新聞2017年4月3日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
ヘリの改修設計で海外の仕事を狙うのは、国内市場の大きな伸びが見込めないからだ。例えば、00年の九州・沖縄サミット(主要国首脳会議)、08年の北海道・洞爺湖サミットでは監視用に改修する仕事が多く来たが、16年の伊勢志摩サミットではそれほど来なかった。市場として有望な国の開拓が求められる。 (日刊工業新聞名古屋支社・名古屋・戸村智幸)

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