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重度な要介護の人が、住み慣れた街で暮らしくために必要なこと

中小病院が中心になった地域包括ケアシステムが欠かせず
 厚生労働省は、今後の急激な少子高齢化を見据え、「地域包括ケアシステム」の構築を進めています。これは、「重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されること」と説明されています。

 そして、それを支えるのは、自助(やれることは自分でやる)、互助(自治会、ボランティアなどの活用)、共助(介護保険、医療保険などの社会保障)、公助(高齢者福祉、生活保護など)です。

 一般の方にはまだ馴染(なじみ)が薄いようですが、介護や医療の世界では重要なシステムです。このシステムの大きさはどのくらいかというと、生活圏域(中学校区、人口2、3万人)が1単位となります。

 その中に、地域での介護の最初の相談窓口となる「地域包括支援センター」が整備されてきており、これがシステムの要です。そして、このシステム作りは、市区町村が中心です。

 では、このシステムにおける医療はどのように整備されるのでしょうか。最も身近な医療機関としては、かかりつけ医や訪問診療を行う診療所、訪問看護ステーション等が挙げられます。

 病院の役割は、このシステムの中で入院を必要とする患者が発生した時、いつでも入院ができる体制を作ることです。ただ、病態により入院するのにふさわしい病院(医療機能)は異なり、また、ふさわしい病院が必ず同じ地域にあるとは限りません。そこで、複数の病院が複数のシステムと連携しておく必要があります。

 今後、病院はさらに機能分化します。都道府県内全体から患者が集まるような大型基幹病院では、提供される医療もさらに高度化していくでしょう。

 一方、日本には200床未満の中小病院が数多く存在します。今後、この中小病院が中心となり地域包括ケアシステムを支援していくことが期待されています。

 肺炎、脱水、脊椎圧迫骨折など、入院が必要な病態は、高齢者を中心に数多く発生します。また、高機能の病院で手術などの急性期治療が終了し、自宅に戻るまでのリハビリテーションが必要な事も多々あります。

 この方たちが自宅に戻るため、介護保険などを調整し安心して暮らすサポート(在宅復帰支援)が必要です。中小病院はこうした役割を担うことになります。

 それぞれの病院が自分たちの役割を考えながら、いいシステムを作り地域に貢献できるよう願っています。
(文=猪口雄二・医療法人財団寿康会理事長、寿康会病院院長)
日刊工業新聞2017年3月31日
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
家の近くにある「かかりつけ医」は「●●さん」と呼ぶ身近な存在だ。例年、どんな症状で病院にかかり、どう処置をしていたか、また予防接種など健康管理のアドバイスもいただける。ネットで健康に関する情報が簡単に手に入っても、リアルな話が聞ける身近な中小病院、診療所はいざという時に心強い存在だ。適切な医療を受けるための“切り分け役”として、地域の中小病院の存在は欠かせない。

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