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世界初の「十割そば」専用工場はどうやってできたか 

山本食品、職人に頼らず機械で製麺の独自技術
世界初の「十割そば」専用工場はどうやってできたか 

国内だけでなく、海外向けの生産が増えている

 山本食品(長野市、山本修社長)は、12月にそば粉100%でつくる「十割そば」の専用工場を新設し、稼働する。製粉から袋詰めまでの自動製麺ラインを設け、自社商品やOEM(相手先ブランド)生産の需要増に応える。健康志向が強い欧米で、たんぱく質の1種であるグルテンが含まれない十割そばが注目されている。国内でも人気が高まり、直近3年は年間20%ずつ販売が伸びている。物販やイベントなど、町おこしの施設としても活用する考え。

 山本食品は十割そばを、機械で生産する技術を持つ。同社によると同様の「十割そばの専用工場は世界で初めて」(山本社長)。

 長野市に隣接する飯綱町に、約1万6500平方メートルの用地を取得した。約3300平方メートルの建屋を設ける。日産能力は、現在比約70%増の10トンになる。総投資額は12億円。製粉、製麺ラインは自社製とソディックの装置を中心に導入する。

 専用工場の建設は供給量の拡大に加え、生産管理を徹底する狙いがある。「二八そば」など小麦粉が含まれる商品と工場を分け、そば以外の材料が誤って混ざるのを避ける。第2期工事では、町おこしにつながるそば店や物販のスペースを設ける意向だ。

 一方、原料のそばの安定調達が課題だとみている。そのため中長期で大学などと連携し、悪天候に強いそばなどの品種改良に取り組む考え。

 山本食品は1974年設立。十割そばの機械製麺の独自技術を強みとする。OEM生産は原料25キログラム分といった小ロットを得意とし、取引社数が増えている。売上高は約11億円。
日刊工業新聞2017年3月29日
六笠友和
六笠友和 Mukasa Tomokazu 編集局経済部 編集委員
つなぎを使わない十割そばを機械でつくるのは難しいそうです。先々代の社長が昭和40年代に「特殊製粉機」の開発に成功し、機械製麺を実現しています。ただ、当時は十割そばの機械製麺があまりに常識外だったため、販売に苦労したようです。地道な営業努力で販売先を増やし、ついに現在の社長の代で専用工場の建設に至ったのです。日本発のヘルシーフードになろうとしている十割そば。山本食品のそんな技術が支えています。ちなみに山本社長のご子息は、玉ノ井部屋の力士、山本さんです。

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