「野菜たっぷりちゃんぽん」国産への執念が人気呼ぶ
リンガーハットの客足回復につながった商品開発力
リンガーハットは2009年10月、ちゃんぽんや皿うどんなどに使う野菜をすべて国産に切り替えた。現在は麺やギョーザに使う小麦粉もすべて国産だ。国産野菜への切り替えに伴い商品価格を引き上げた。しかし、国産野菜を使っていることが消費者にとっては安心・安全の証(あかし)の一つと映り、客足の回復につながった。
野菜を国産に切り替えるきっかけとなったのは米浜和英会長兼CEO(最高経営責任者)の経験だった。06年からの2年間に日本フードサービス協会(JF)の会長として日本全国の農産地を訪れた。採れた野菜を試食し、国産野菜のおいしさを実感したことから、08年にリンガーハットへ復帰した際に切り替えを提案した。
キャベツ農家にオランダサヤエンドウの栽培を依頼。国産キクラゲもいつか必ず
ちゃんぽんに使う野菜7品目のうち、すでにキャベツは契約栽培で国産品を使っており、モヤシは自社工場で栽培していた。しかし他5品目については中国などで収穫、加工された冷凍の輸入品に頼っていた。
ちゃんぽんに彩りを添えるため、同社では絹サヤとキクラゲを使っていた。しかし国産の絹さやとキクラゲはほとんど出回っていない。その代わりとして注目したのが、オランダサヤエンドウだ。絹サヤよりも大きく肉厚であり、和歌山県などで年間約50トンが生産されていた。
しかしリンガーハットの全店舗で導入するためには、その4倍以上の量が必要だったため、キャベツの契約栽培で培った実績がある農家に依頼した。キクラゲについても、諦めたわけではない。限定メニューで国産キクラゲの復活を予定している。
生野菜に切り替えたことで、野菜をカットする必要性も生まれた。佐賀と静岡の工場にラインを新設し、コストを抑えるため自社でカットを手がけることにした。ただ生野菜は加工が難しい。工場に届く野菜は形もマチマチだ。「スーパーなどで売られている野菜しか見たことがない従業員には戸惑いがあったかもしれない」と松永一郎購買チーム課長は振り返る。
調達、加工の次の課題はコストだ。国産化したことで増えたコストを吸収するため、同社は知恵を絞った。ちゃんぽんのスープの量を減らす一方、玉ネギの炒め方や具材のバランスなどを改良した。スープの減量には塩分やカロリーを抑えられる点で、健康面でのメリットもある。価格も地域差はあるが40円以上引き上げた。
これからも「ちゃんぽん」に合う野菜を探していく
「冷凍野菜と異なりシャキシャキした食感が得られ、おいしい国産野菜をたっぷり食べてほしい」。その思いから同社は「野菜たっぷりちゃんぽん」を発売した。野菜の使用量は480グラムで、厚生労働省が推進する1日の摂取目標350グラムを大きく上回る。野菜を食べたいと考える、健康志向の強い人や女性を引きつけ、発売から1年で販売数は累計500万食を超えた。
国産野菜に切り替えた当初、同社はデフレや不況の影響で経営が悪化し、不採算店舗50店を閉じるなどの経営改善策を図っていた。「野菜国産化は(リンガーハットの)特色を出していかないといけないという思いの表れだった。形状の問題でスーパーなどに出荷できない野菜も、外食では使える」と小田昌広執行役員は説明する。
切り替え当時から店舗は100以上増え、全店で1万2400トンだった国産野菜の年間使用量は、14年度には1万4000トンとなった。「これからも、ちゃんぽんに合う野菜を探していく。国産野菜を少しでも多く使うことが私たちの使命」(松永課長)と力を込める。
(文=江上佑美子)
野菜を国産に切り替えるきっかけとなったのは米浜和英会長兼CEO(最高経営責任者)の経験だった。06年からの2年間に日本フードサービス協会(JF)の会長として日本全国の農産地を訪れた。採れた野菜を試食し、国産野菜のおいしさを実感したことから、08年にリンガーハットへ復帰した際に切り替えを提案した。
キャベツ農家にオランダサヤエンドウの栽培を依頼。国産キクラゲもいつか必ず
ちゃんぽんに使う野菜7品目のうち、すでにキャベツは契約栽培で国産品を使っており、モヤシは自社工場で栽培していた。しかし他5品目については中国などで収穫、加工された冷凍の輸入品に頼っていた。
ちゃんぽんに彩りを添えるため、同社では絹サヤとキクラゲを使っていた。しかし国産の絹さやとキクラゲはほとんど出回っていない。その代わりとして注目したのが、オランダサヤエンドウだ。絹サヤよりも大きく肉厚であり、和歌山県などで年間約50トンが生産されていた。
しかしリンガーハットの全店舗で導入するためには、その4倍以上の量が必要だったため、キャベツの契約栽培で培った実績がある農家に依頼した。キクラゲについても、諦めたわけではない。限定メニューで国産キクラゲの復活を予定している。
生野菜に切り替えたことで、野菜をカットする必要性も生まれた。佐賀と静岡の工場にラインを新設し、コストを抑えるため自社でカットを手がけることにした。ただ生野菜は加工が難しい。工場に届く野菜は形もマチマチだ。「スーパーなどで売られている野菜しか見たことがない従業員には戸惑いがあったかもしれない」と松永一郎購買チーム課長は振り返る。
調達、加工の次の課題はコストだ。国産化したことで増えたコストを吸収するため、同社は知恵を絞った。ちゃんぽんのスープの量を減らす一方、玉ネギの炒め方や具材のバランスなどを改良した。スープの減量には塩分やカロリーを抑えられる点で、健康面でのメリットもある。価格も地域差はあるが40円以上引き上げた。
これからも「ちゃんぽん」に合う野菜を探していく
「冷凍野菜と異なりシャキシャキした食感が得られ、おいしい国産野菜をたっぷり食べてほしい」。その思いから同社は「野菜たっぷりちゃんぽん」を発売した。野菜の使用量は480グラムで、厚生労働省が推進する1日の摂取目標350グラムを大きく上回る。野菜を食べたいと考える、健康志向の強い人や女性を引きつけ、発売から1年で販売数は累計500万食を超えた。
国産野菜に切り替えた当初、同社はデフレや不況の影響で経営が悪化し、不採算店舗50店を閉じるなどの経営改善策を図っていた。「野菜国産化は(リンガーハットの)特色を出していかないといけないという思いの表れだった。形状の問題でスーパーなどに出荷できない野菜も、外食では使える」と小田昌広執行役員は説明する。
切り替え当時から店舗は100以上増え、全店で1万2400トンだった国産野菜の年間使用量は、14年度には1万4000トンとなった。「これからも、ちゃんぽんに合う野菜を探していく。国産野菜を少しでも多く使うことが私たちの使命」(松永課長)と力を込める。
(文=江上佑美子)
日刊工業新聞2015年03月30日 モノづくり面