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日産が示した職業能力開発大学校の生かし方

車体制振材のピッキング装置を開発、作業効率12%向上見込む
日産が示した職業能力開発大学校の生かし方

関東能開大と日産自動車栃木工場が共同で開発した「ピッキング装置」

 関東職業能力開発大学校(栃木県小山市)は日産自動車栃木工場(同上三川町)と共同で、「メルシート材の自動ピッキング装置」を開発した。自動車の車体用制振材料のメルシートを必要な分だけ材料棚から円滑に取り出し、作業者に供給する。手によるピッキングであった取り間違いを解消する。日産栃木は作業効率を従来比12%向上できるとみている。4月以降、同工場で実用化する予定。

 ピッキング装置の工程作業時間は1車種最大90秒で、3年間の連続稼働回数は約36万回。寸法は幅900ミリメートル以下に対応する。装置1台に九つの材料棚分の吸着部と取り出し部、排出部がある。吸着部はモジュール設計で容易に着脱でき、モデル刷新などに合わせてレイアウトを変更可能。材料がない空き箱も同様に排出できる。

 車体製作現場ではRFID(無線識別)を用いて、必要なメルシートの情報をタブレット端末で取り出し、装置を制御する。吸着部は箱の中に複数枚積み重なるメルシートを真空パッドで吸着し、プーリーで1枚だけ持ち上げる。メルシートが複数列置かれた場合は1軸、2軸テーブルで吸着パッドを動かす。

 取り出し部はロッドレスシリンダーで往復する板状の機構で、吸着部で持ち上げたメルシートをすくい取り、板の上に載せ、運ぶ。排出部はストッパー機構で取り出し部の板にある溝とU字型の爪を合わせ、円滑に排出できる工夫を施した。

 メルシートは熱で融着し使う車体用防音・防振材で、材料はアスファルト。季節や温度で硬さが変化するため取り出しを自動化しにくかった。装置開発費は約137万円。
日刊工業新聞2017年3月27日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
関東能開大と日産はこれまでにドア部分のネジ締め装置、ドア用ガラスのピッキング装置を共同開発している。

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