MUJINの教育キットはロボットばら積みピッキングの市場を広げるか
システムインテグレーターの育成急務
MUJIN(東京都文京区、滝野一征CEO)は、ばら積みピッキング用の知能ロボットコントローラ「MUJINコントローラ・ピックワーカー」を搭載した教育キット(写真)の販売を近く始める。技術習得やシステム提案にキットを生かしたいロボットシステム構築(SI)企業の要望に応えた。価格は1000万円弱を予定。初年度に約30セットの販売を見込む。
教育キットの構成は、MUJIN独自のコントローラに加え、独自のペンダント、3次元ビジョンセンサー、ハンド(電動式・吸着式)、箱、簡易治具、6軸ロボット。ロボットとセンサーはユーザーの要望に応じメーカーや型式などの変更が可能。同社が行う3日間のトレーニングプログラムを無償受講できる特典も付ける。
産業用ロボットを用いたばら積みピッキングシステムの需要は人手不足が深刻な物流分野や製造業で高まっている。だが、MUJINによるとシステムの普及にはSI企業の育成が不可欠で、今後同社は積極的にSI企業との協業を加速する計画という。
MUJINはばら積みピッキングシステムなどロボットの制御システムを得意とする。
―創業のきっかけは。
「私は超硬工具メーカーにいたが、出杏光魯仙CTOに熱心に口説かれて一緒に創業することになった。昔、米国のウィローガレージに私が呼ばれていたことがあり、そこで出杏光CTOと知り合った。彼はロボットコントロールの技術を日本でビジネスにしたいと考えていたので、私を誘ったのだろう。だが、彼はソフトの事は知っていてもハードのことは知らない。生産現場の事も知らない。私は現場のことを知っていたので、良いタッグが組めたと思う」
「若い人に、リアルなモノづくりの現場で働きたいと考えている人が増えている。そういう人間に活躍の場を与えたいというのも一つ。ソフト業界だとゲームは一発でもうかるおいしい仕事と言われる。だが、ロボットなどの製造業の困り事をじっくり解決したいと考える優秀な若い人材もいる。MUJINはそういう覚悟のある人たちと事業を進めている」
―これまで乗り越えてきた苦労について。
「ハードの世界で成功するには時間がかかる。出安光CTOと二人でMUJINを立ち上げてから、これまで苦労のし通しだった。ソフトだけならすぐ開発できる。だが、ハードは時間がかかる上に、製造現場の事を知り尽くしていないといけない。ソフトはバグがあれば直せばいい。だが、ハードは最初から高い信頼性が求められる」
「ロボットの動きを何度も再現する。これは本当に難しい。ソフトは条件が変化しないが、ハードを動かす工場は、温度、湿度など、影響するパラメーター(要因)が数多ある。モノづくりの現場で、熟練者が条件を調整すると同じ品質のモノを生産できる。こうした経験や勘を自動化するのは相当な困難を伴う。MUJINは苦労を重ね、現場の知見を学び、そういったパラメーターの調整、味付けを成し遂げた。これから後発が出てこようと、追いつくのは不可能に近いという自信がある」
―あらためて、事業にかける思いを。
「自動化は、人の生活を良くするもの。例えロボットが人に代わって仕事をするようになっても、人間は新たな仕事や雇用を生み出す。これは自動車や鉄道の登場でも成されたことだ。MUJINのコントローラーを使えば、誰でも産業用ロボットを扱えるようになり、ロボットも知能化し、誰でもロボットメーカーになれる。生産性は大幅に向上し、人はより良いアイデアを出す、といった仕事ができる。我々はハイエンド、ローエンドのコントローラーを開発した。この二つを武器に徐々にロボットコントローラーのデファクトスタンダードになれると考えている」
―今後の事業展開は。
「ハイエンドのピックワーカーは、物流施設や生産設備に入りつつある。ここをうまくやりつつ、新興国での産業用ロボット採用へティーチワーカーを提案していきたい。コントローラーはロボット1台に必ず1台必要になる。しっかりユーザーを押さえれば、工場の生産性を高めるとき、ハイエンドのコントローラーユーザーにもなってくれる」
(聞き手=石橋弘彰)
教育キットの構成は、MUJIN独自のコントローラに加え、独自のペンダント、3次元ビジョンセンサー、ハンド(電動式・吸着式)、箱、簡易治具、6軸ロボット。ロボットとセンサーはユーザーの要望に応じメーカーや型式などの変更が可能。同社が行う3日間のトレーニングプログラムを無償受講できる特典も付ける。
産業用ロボットを用いたばら積みピッキングシステムの需要は人手不足が深刻な物流分野や製造業で高まっている。だが、MUJINによるとシステムの普及にはSI企業の育成が不可欠で、今後同社は積極的にSI企業との協業を加速する計画という。
MUJINはばら積みピッキングシステムなどロボットの制御システムを得意とする。
日刊工業新聞2017年3月17日
コントローラーで世界一目指す
―創業のきっかけは。
「私は超硬工具メーカーにいたが、出杏光魯仙CTOに熱心に口説かれて一緒に創業することになった。昔、米国のウィローガレージに私が呼ばれていたことがあり、そこで出杏光CTOと知り合った。彼はロボットコントロールの技術を日本でビジネスにしたいと考えていたので、私を誘ったのだろう。だが、彼はソフトの事は知っていてもハードのことは知らない。生産現場の事も知らない。私は現場のことを知っていたので、良いタッグが組めたと思う」
「若い人に、リアルなモノづくりの現場で働きたいと考えている人が増えている。そういう人間に活躍の場を与えたいというのも一つ。ソフト業界だとゲームは一発でもうかるおいしい仕事と言われる。だが、ロボットなどの製造業の困り事をじっくり解決したいと考える優秀な若い人材もいる。MUJINはそういう覚悟のある人たちと事業を進めている」
―これまで乗り越えてきた苦労について。
「ハードの世界で成功するには時間がかかる。出安光CTOと二人でMUJINを立ち上げてから、これまで苦労のし通しだった。ソフトだけならすぐ開発できる。だが、ハードは時間がかかる上に、製造現場の事を知り尽くしていないといけない。ソフトはバグがあれば直せばいい。だが、ハードは最初から高い信頼性が求められる」
「ロボットの動きを何度も再現する。これは本当に難しい。ソフトは条件が変化しないが、ハードを動かす工場は、温度、湿度など、影響するパラメーター(要因)が数多ある。モノづくりの現場で、熟練者が条件を調整すると同じ品質のモノを生産できる。こうした経験や勘を自動化するのは相当な困難を伴う。MUJINは苦労を重ね、現場の知見を学び、そういったパラメーターの調整、味付けを成し遂げた。これから後発が出てこようと、追いつくのは不可能に近いという自信がある」
―あらためて、事業にかける思いを。
「自動化は、人の生活を良くするもの。例えロボットが人に代わって仕事をするようになっても、人間は新たな仕事や雇用を生み出す。これは自動車や鉄道の登場でも成されたことだ。MUJINのコントローラーを使えば、誰でも産業用ロボットを扱えるようになり、ロボットも知能化し、誰でもロボットメーカーになれる。生産性は大幅に向上し、人はより良いアイデアを出す、といった仕事ができる。我々はハイエンド、ローエンドのコントローラーを開発した。この二つを武器に徐々にロボットコントローラーのデファクトスタンダードになれると考えている」
―今後の事業展開は。
「ハイエンドのピックワーカーは、物流施設や生産設備に入りつつある。ここをうまくやりつつ、新興国での産業用ロボット採用へティーチワーカーを提案していきたい。コントローラーはロボット1台に必ず1台必要になる。しっかりユーザーを押さえれば、工場の生産性を高めるとき、ハイエンドのコントローラーユーザーにもなってくれる」
(聞き手=石橋弘彰)
日刊工業新聞2017年1月5日