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主治医が長生きすれば患者も長生きする

がんの治療をした人の平均余命が5年超え。同じ医師の方が患者のために
 医療関係の人はさまざまな表現で揶揄(やゆ)されています。このような状況は色々な原因が考えられます。(1)医師や各職種の医療関係者が引き起こす事件が毎日たくさん報道されている(モラルのなさを指摘されております)(2)“コンビニ受診”に象徴されるように、医療に対する社会の評価が下がってしまった。こういった要因が無関係だとは思えません。特に、(2)に関しては医療費がついに中国に抜かれて低額であることも一因とも思われます。

 それでも、不動産屋さん、営業職の方、工業関係などの成功者の方々はよく、「評価が低いといってもお医者さんたちは依然として他の仕事に移らないでやってるじゃないか」という風に言われる方が多いのです。

 しかし言われる側から考えて本心を申しますと建前としては、医療関係者は医師などになるという志を立て受験という競争試験を切り抜けているので医療の職で頑張って生きているという心境であり本音では、他の仕事に転職するなどの潰(つぶ)しが利かないので我慢している、ということかもしれません。

 でもこのように簡単に医療職をやめないということは、患者さんにとっても大切なことと言えると思います。よく考えてください。先日、がんの治療をした方の平均余命が5年を超えているという統計が新聞にも出ていました。ということは、5年以上は自分の主治医に元気でいてもらわないと患者さんは困ってしまうということです。

 また、医師は卒業して10年、15年と経つと、35―40歳となり、人生の岐路に立って職場が変わったりします。そうすると主治医はその施設の別の医師に変わるのが現状です。

 出来れば同じ医師の方が良いと思われる方も少なくはないと思います。ですから、私は親の主治医には親より若い医師を選んできました。それでも患者である我が親より早く旅立って困っていました。なにも良い医師は不養生だとか「紺屋の白袴」だとかいうわけではありません。

 しかし、欧米先進国の専門医レベルに比べ年収では3分の1ないし5分の1ながら、研究や個人的な勉強をし、家族の一員として、社会の一員として活動したうえで、患者さんの期待に応えるのは大変です。なにせ、乳がんの患者さんの治療後の平均余命の指標である10年生存率は70%を超えますし、まだまだ治療成績は向上しているのです。

 医師にも余裕のある生活をさせ、患者さんとともに長生きを楽しめるような社会にして下さることを願ってやみません。
(文=川内章裕・池袋病院院長)
日刊工業新聞2017年3月17日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
最近は自分よりも年下の医者が相当増えてきたが、まだ気分的に年齢が上のお医者さんの方が安心感を感じてしまう・・。先入観は怖い。

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