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ダイハツの経営戦略にみるトヨタとの微妙な関係

開発は正反対の概念。トヨタはスズキとの連携強化も
ダイハツの経営戦略にみるトヨタとの微妙な関係

16日の中期経営計画を発表したダイハツの三井社長

 2025年度までの中長期経営計画「D―チャレンジ2025」を発表したダイハツ工業。親会社のトヨタ自動車との連携を深め、25年度にダイハツ開発車はグローバル生産台数を15年度比約100万台増の250万台に設定。「DNGA」と呼ぶ新設計思想に基づいた車は軽自動車から投入し、小型車の「Aセグメント」「Bセグメント」まで広げる。新興国の攻略や先進技術の取り込みなども進め、ブランド力を高める。

 ダイハツは16年8月にトヨタの完全子会社になり、3月には創立110周年を迎えた。新興国では生産拠点を構えるインドネシアやマレーシアといった東南アジア諸国連合(ASEAN)を最優先に、トヨタの事業基盤も活用して担う地域を広げていく。三井正則社長(写真)は「生産は両社の持つ既存の事業体を有効活用しながら、狙うは良品廉価なクルマづくりだ」と説明した。

 電動化や自動運転、コネクティッド(つながる車)などの先進技術は軽自動車やコンパクト車ならではの仕様を想定しており「トヨタにダイハツが入って勉強する」(三井社長)。すでに手がけている安全機能については「既販車に後付けできないか研究している」(同)という。
日刊工業新聞2017年3月17日
中西孝樹
中西孝樹 Nakanishi Takaki ナカニシ自動車産業リサーチ 代表
ダイハツの中期経営計画と位置付けるより、トヨタ小型車の中核戦略として見た方がこの計画の意味は大きく見えるはずだ。「いいクルマづくり」は確かに骨太で魅力的なトヨタのクルマ作りにつながっている。それを認めても、台数成長と収益性確保に結実しなければ、技術者の自己満足に終わる。やや、高価格、高コストのクルマ開発に傾倒しがちなトヨタの開発陣に対して、ダイハツの目指すDNGAは、安くても「いいクルマづくり」を両立させようとする正反対の概念であろう。これが上手くいって良いバランスが取れる。ただ、当初考えたよりDNGA開発に時間がかかる印象。更に、新興国Bセグメントに至るには更なる時間を要する。新興国Bセグメントをトヨタ小型車カンパニーで対応するのか、あるいはスズキとのアライアンスを生かすのか、注目のポイントであろう。

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