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次世代半導体を搭載したインバーター、鉄道から自動車へ広がるか

三菱電機はHV向けを開発、東洋電機製造は広島電鉄に納入
次世代半導体を搭載したインバーター、鉄道から自動車へ広がるか

三菱電機のSiC搭載インバーター

 三菱電機は小型、高出力を実現したハイブリッド車(HV)用インバーター(写真)を開発した。熱効率に優れた炭化ケイ素(SiC)パワー半導体モジュールを採用し、体積は5リットル、体積当たりの電力量を示す電力密度は1リットル当たり86キロボルトアンぺアを実現した。今後量産開発を進め、2021年度以降の事業化を目指す。

 2モーター方式のHVに対応した製品でバッテリーの電圧変換やモーターの回転制御などに使う。SiCパワー半導体モジュールと冷却器の接続にグリスではなく、ハンダを採用することで放熱性を高めた。SiCパワー半導体の小型化につながりシリコンウエハーのパワー半導体を採用した同様のインバーターと比べて約半分に小型化した。

 HV向けに提案するが、プラグインハイブリッド(PHV)や電気自動車(EV)への技術展開も検討する。世界的に自動車の燃費規制が厳しくなり、電動車両の市場が拡大するとみてHV向けの小型・高出力インバーターを開発した。空間拡大と燃費向上のため、インバーターには小型化が求められている。

 一方、東洋電機製造は広島電鉄の「3900形電車」向けに、炭化ケイ素(SiC)素子を使用した可変電圧可変周波数制御(VVVF)インバーター装置を納入した。環流ダイオードにSiC素子を適用し、従来品に比べ小型化や省エネルギー化につなげた。東洋電機製造がSiC搭載のインバーターを納入するのは、今回が初めてとなる。

 まずは3900形電車1編成に2台を納入し、すでに2月末から営業運転を始めている。今後も順次更新していく。インバーターの入力電圧は直流600ボルト。SiCは高温稼働が可能で冷却器を小さくできるほか、周辺の保護回路を削減できるといった特徴を持つ。これにより、体積・質量とも従来製品に比べ35%減らした。
東洋電機製造のインバーター装置

日刊工業新聞2017年3月13日16日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
鉄道向けのSiCは新幹線の新型「N700S」をはじめかなり採用が広がってきている。三菱電機はSiCのデバイスも内製化しているだけでに量がでるHV用に採用を増やしたいところ。

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