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“買わない三菱電機”のDNA―キャッシュリッチ企業に変化が訪れる?

伊の空調メーカー買収 「必要なら次の一手、二手を打っていきたい」(柵山社長)
 三菱電機は25日、イタリアの業務用空調メーカーであるデルクリマを買収すると発表した。11月30日までに全株式を取得する計画で、買収総額は約6億6400万ユーロ(約902億円)の見込み。ビルや工場など大型施設で使われるチラー空調に本格参入し、欧州事業を拡大する狙い。三菱電機が空調メーカーを買収するのは初めて。

 同日会見した柵山正樹三菱電機社長は「今回の買収は売上高5兆円、営業利益率8%以上という2020年までの目標を実現する確度を高めるとともに、その後の中長期的な成長の布石。必要な場合は次の一手、二手を打っていきたい」と語った。

 デルクリマの売上高は約500億円。三菱電機は大株主のデロンギインダストリアルからデルクリマの株式74・97%を取得。またTOB(株式公開買い付け)を実施し、残り25・03%を取得する。

 三菱電機の空調冷熱システム事業の2016年3月期の売上高は、7200億円の見通し。現状では家庭用など中小型空調が中心。デルクリマを買収し、欧州で広く普及する大型のチラー空調の需要を取り込む。デルクリマの拠点を活用しアジアでの販売強化も狙う。また欧州の環境規制への対応力も高める。

「投入した資本でいくら稼いだか。右肩上がりになっているか」


日刊工業新聞2015年5月19日


 三菱電機は18日、2015年度の経営戦略を公表し、事業効率の向上に向けて部門ごとにROIC(投下資本利益率)を導入すると発表した。継続的に改善状況を検証し、株主資本利益率(ROE)の改善につなげる。また投資戦略はM&A(合併・買収)を通じ、不十分な製品群や販路を補完する考えを明示した。柵山正樹社長は同日会見し「投資に向けた動きは変わらない」と、引き続き成長投資に力を入れる意向を示した。

 三菱電機は14―20年度までの経営戦略を推進しており、FAや自動車機器、昇降機、鉄道車両用電機品など産業・社会インフラ分野の事業を拡大する。これにより売上高を13年度から約1兆円積み増し5兆円超に、営業利益率を13年度の5・8%から8%超に高める。

 15年度から投資効率の見える化を図るため、重電システム部門や産業メカトロニクス部門、電子デバイス部門などにROICを導入する。柵山社長は「投入した資本でいくら稼いだかを確認できる。事業間で数値を比較するのではなく、右肩上がりになっているかどうかのトレンドを見ていく」と狙いを語った。20年度の目標値など詳細は今後、詰める。

 一方、20年度に掲げた営業利益率の目標に関し、早くも上方修正する考えを示唆した。家庭電器は6%超の目標に対し14年度は5・7%、電子デバイスは7%超の目標に対し12・7%まで拡大した。今後、為替レートを踏まえつつ「高い目標を設定する」(柵山社長)としている。

 同社は20年度までの経営計画で、FAなど八つの成長事業を強化する方針を明示。特にFAや自動車機器など産メカ部門の売上高を4000億円増の1兆5000億円超に拡大。営業利益率を13年度の8・9%から13%超に引き上げる。また昇降機など重電部門は売上高を3000億円増の1兆4500億円超に、営業利益率を6・5%から8%超にする。

日刊工業新聞2015年08月26日 4面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
三菱電機が掲げる経営指標は営業利益率、借入金比率、株主資本利益率(ROE)の三つ。自己資本が積み上がる経営体質のため、当期純利益の絶対額を増やさなければROEが下がってしまう。今年度から投下資本利益率(ROIC)を導入したが、依然として「資本を寝かせている」という市場からの圧力は強い。2014年3月期のROEは10・9%で、日立の11・2%に劣る。M&Aという飛び道具を敬遠し、リスクの低い自前主義にこだわってきたが、慎重な経営手法のままでは国際競争から取り残される恐れもある。柵山社長は5月の経営説明会で「事業の成長に資するM&Aは実施する」と宣言したが、その言葉に対する市場の期待は柵山氏が考えるよりも大きい。  

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