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日本電産から買収を仕掛けられたこともある新幹線用パンタグラフ国内トップ企業は?

文=清水秀和(証券アナリスト)東洋電機製造は、日立と鉄道電機品でシナジーを出せるか
日本電産から買収を仕掛けられたこともある新幹線用パンタグラフ国内トップ企業は?

日立の英国高速鉄道「IEP」向け車両

 東洋電機製造は、英国など海外鉄道の大型案件が相次ぐ日立グループとともに、鉄道車両に使う駆動装置やパンタグラフなどを手掛ける鉄道用電機品の製造大手。新幹線用パンタグラフでは、国内トップシェアを誇る。

 実際、「鉄道車両に使う電機品は海外ビジネス向けに引き合いが増えている」(IR会場の寺島憲造社長)。寺島氏は前社長の土田氏とともに、主力事業である鉄道向け電気機器の海外展開を主導した実績を持つ。

 高い品質と技術は、日立製作所が業務資本提携(発行済み株式を約4・5%出資)をすることでも証明されている。日立は都市鉄道や高速鉄道の車両製造で強みを持つが、パンタグラフや駆動用ギアなど一部電子品の調達では他社からの供給に依存している。

 特に鉄道車両向け複合機器の駆動装置は、歯車(ギア)が組み込まれ、モーターの回転動力を車両に伝える重要な位置づけにある。同社が最も得意とする分野である。また、日立が手掛けない都市鉄道向けの制御システムにも強く、両社は製品の相互供給や資材調達、製品設計・開発でも補完関係にある。今回の事業協力によって、世界展開を加速する。

 このほか、産業事業では製造業における一般産業機械設備、自動車開発用試験機、社会インフラ設備(発電装置、上下水道設備システムなど)を手掛ける。

 情報機器事業は、国内シェア50%と首位の定期券発行機や、ICカードチャージ機などの駅務機器や遠隔監視システムを扱う。2015年5月期の事業別売上高構成比は、交通事業67・8%、産業事業29・3%、情報機器事業2・8%、その他0・1%未満。15年5月期の海外売上高比率(顧客所在地ベース)38・0%。

 なお、17年5月期を最終年度とする3カ年中期経営計画では、国際競争力の強化、生産体制の再構築などを基本戦略として掲げている。17年5月期の連結売上高500億円(15年5月期の売上高実績は396億円)、営業利益30億円(同営業利益の実績は16億円)が目標だ。
 <プロフィル>
 清水秀和=証券アナリスト兼IMSアセットマネジメント社長
 年間約150社を取材し、延べ5000社の取材実績を持つ。成長する技術系製造業の企業発掘を専門としており、身近で分かりやすい解説に定評がある。株式公開予定企業育成の実務経験を生かし、東北大学や日本大学などでベンチャー起業論の講演も多数。
 ※「アナリスト千里眼・成長企業発掘編」を毎週木曜日に日刊工業新聞で連載中

日刊工業新聞2015年10月01日 金融面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
東洋電機製造は08年に日本電産からTOB(株式公開買い付け)をしかけられたが拒否。その後、10年に日立と資本・業務提携した。当初は安定株主対策が色濃いようにも思われたが、共同開発品も生まれ少しずつ「実」も出始めている。日立と提携交渉の前線にいたのが、現在の寺島憲造社長(当時専務)。車両メーカーの世界再編が進む中で、電機品メーカーの再編も考えられる。

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