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ソニーが新事業創出プログラムを欧州で展開

まずスウェーデンで拠点立ち上げ
ソニーが新事業創出プログラムを欧州で展開

新規事業を創出する仕組みを横展開してイノベーションを活性化(左が平井一夫社長)


クラウドファンディングでなければこの時間軸で製品を出せなかった


 ークラウドファンディングはすぐにオッケーが出たんですか。
 「やりたいと十時に言ったら『やってみろ』と。もちろん。ソニーで最初の試みなので、いきなり十時に言う前にいろいろな方に相談しました。それでも絶対にオッケーがでるかわからない状況でした。結構段取りもありましたが、なんとか前に進めたいという思いでしたね」

  ーソニーの社名を出さないというのは誰の判断ですか。
 「みんなで決めたことです。その方が早く出品できるので。やらせて下さいといってから2カ月後にはクラウドファンディングに出しましたから。ソニーという名前があったら、おそらくその時間軸では出せなかったと思います。そもそもクラウドファンディングのルールが社内にありませんし、今回は『SONY』ブランドではなく特例でした」

 ーソニーということが明らかになった前後で周りの反応に変化は
 「社内は知っていたので、えらい騒ぎになっているな、という感じです。社外の反響はいろいろありますね。社名を出さないでクラウドファンディングやっていた時期にきたコラボの打診があってすごい自信になりました」

 ーコラボの打診があった時はすぐに身を明かしたんですか。
 「場合によります。ある人たちには『僕たちソニーなんですど大丈夫ですか?』と言ってびっくりされたり、言わずにしばらくやりとりしたりとか」

 ークラウドファンディングをやる前の手応えは。実際には在庫がなくなるくらいに話題になりましたけど。
 「正直、まだ分からないです。クラウドファンディングはコンセプトで売っているところがあります。応援で買うという意味もあるし、イベント的な意味もある」

 「完成品がお客様のイメージ通りかは、出荷が始まって手元に届いてみないと分からないですから。そして一般販売になった時にさらにどういう反応があるか。自分の中では、ファッションのデジタル化でやろうとしていたことのまだ2%くらい。どこまでいっても未知な部分はあります」

フェーズチェンジも最初の軸は変わっていない


    

 ー新しいこと立ち上げるところまではきました。次のフェーズになると事業をどうスケールさせるのかという課題もでてきます。新事業ではよくあることですが、いかに最初の気持ちを維持しながら、事業のフェーズを変えていけるかがカギになります。
 「フェーズは当然変わってきていて、世の中に出すとやることも変わる。マーケティングしながら開発して、作ったものが届き始めて、どうやって事業をスケールさせるか。それは当然考えます。でも実際に事業のオペレーションを僕たちはやったことがない。事業の立ち上げ経験があるメンバーでではないので模索しながらです。

 「フェーズが変わったという意識はすごくありますが、ビジョンを変えるかは別の話。東京ガールズコレクションが東京ゲームショーくらいまでにデジタル化されるためにどうすればいいか。そこの軸は変わりません」

 ー話題になった後、平井さんから声をかけられましたか。
 「平井は感性価値を大事にしてます。時計の機能は時間がわかるだけなのに、すごく価格帯も広い。機能価値は少ないけど感性価値あるから買ってもらえる。ではFES Watchがもっている価値がなんなのか」

 「この前も平井は、『もっと見た目が大きく変えられるモードあったらどうか。ファッションは自己表現なので、大胆にアピールしたい人向けの機能も考えてみてよ。でもこれは僕の個人的意見だから、最終的には自分たちで決めてくれればいいからね』といちユーザー目線でおもしろい意見をくれました」

<僕らが独立してもソニーに追いつかれ負ける>

日刊工業新聞2016年12月1日
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
基本的に日本と同様の仕組みで新事業を育成していく。ただ日本ではクラウドファンディングを活用した事業化モデルを展開しているが、欧州発のアイデアをビジネス化する方法は、事業や製品の特徴や各プロジェクトチームのニーズに合わせて今後詰める。以前取材した「FES Watch」の記事も合わせてお読み下さい。

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