循環経済・脱炭素化実現へ…プラスチック再生の現在地
サーキュラー・エコノミー(循環経済)や脱炭素化に向け、プラスチックのリサイクルは不可欠だ。マテリアルリサイクルでは、日本容器包装リサイクル協会(容リ協、東京都港区、金子眞吾理事長)が、容器包装プラの再商品化事業を進めている。民間企業でも使用済みプラを加工・輸出するパナ・ケミカル(東京都杉並区、犬飼健太郎社長)などの取り組みが堅調で、社会への定着が進んでいる。(いわき・駒橋徐)
容リ協、容器包装を再商品化
容リ協は再商品化事業で法律に基づきプラ容器包装とプラ製品を回収、リサイクルし、日本全体のプラ容器、製品プラの資源循環を担う。2023年度引き取り量は65万トン、再商品化製品の販売は43万トン。
ペレットや再生樹脂などに使用する材料でのリサイクルが42%を占め、58%がケミカルリサイクルで活用している。材料リサイクルでは半分程度が残さとなり、プラ固形燃料(RPF)などとしてリサイクルする。日本のプラ廃棄物の総量は年間950万トン程度とされる。うちマテリアルリサイクルでの循環は約20%の180万トンだ。
プラスチックの引き取り契約量は増加傾向にあり、事業者の能力増強や新規事業者の参入が進んでいる。サーキュラー・エコノミーの実現に加えて、マイクロプラスチックなど環境汚染の防止などの観点からもリサイクルは待ったなしだ。
パナ・ケミカル、ペレットを国内外に展開
民間でもマテリアルリサイクルをグローバル展開で、資源循環事業を進める企業の動きもある。パナ・ケミカルは高純度の再生プラを海外に供給するマテリアルリサイクルを手がけ、国際条約に定める基準に適合した適正品質の“資源プラスチック”をグローバル展開する。現在、インゴットやペレットとして東南アジアなどに輸出する量は月6000トン程度。専用の処理機を導入した産業廃棄物処理事業者などが加工したプラを、有償で購入して海外展開する。
資源プラをペレットにして成型する拠点はマレーシアなど東南アジアに合計十数社。これをバージンプラスチックに30%程度混錬し、中国・東南アジアで自動車部品や家電製品などに製品化する。メキシコやカナダ、リトアニア、東欧諸国にも供給される。同社の理念は“潔(いさぎよ)いリサイクル”。国内循環に固執せず、経済合理性、持続可能性を判断し、輸出、国内循環、サーマルリサイクルの順に展開する。国内外の市場を大きな輪でとらえたグローバルな循環と、国内循環の小さな輪を使った全体最適を目指す。
犬飼社長は今後、「資源プラ輸出に組み合わせ、国内市場も増強する」と説明する。国内市場での戦略として掲げるのが「クールブラックリサイクリング」。白色のプラスチックは色染めにコストがかかるが、黒色のプラスチックは青、赤の材料でも黒にしやすく低コスト。自動車のバンパーや家電、OA機器などでの使用を促し、市場拡大につなげたい考えだ。