「環境に優しい新素材」生み出せ。三菱ケミカル・旭化成…化学メーカーが生かす技術力
バイオマス活用・省エネ推進
大手化学メーカーが強みの技術力を生かして、環境に優しい素材の開発をさらに活発化している。環境負荷低減に資する点は、バイオマス原料の活用や生産時のエネルギー消費量の削減、リサイクル性と多岐にわたる。社会に求められる持続可能性を実現する重要性が高まる中、技術開発の幅も広げることで、よりさまざまなニーズに対応できるようにする考えだ。(山岸渉)
化学メーカーはグローバルで、さまざまな環境に関わる規制や顧客ニーズなどを踏まえた対策を講じている。その取り組みはバイオマス化や消費エネルギーの削減、リサイクルに関わる技術開発と幅広い。
三菱ケミカルグループは、バイオマス原料の活用を注力分野の一つに位置付ける。植物由来のポリカーボネートジオール「ベネビオール」は設計の工夫などで品質の高さを維持しつつ、バイオマス比率を高めたグレードの提供を開始。ポリウレタン製品やポリエステル製品に柔軟性や耐久性などを付与できる植物由来ポリオール「バイオPTMG」は、加平(大阪府泉佐野市)の合成皮革に採用された。バイオPTMGは「顧客ニーズも一部出てきており、今後は未利用の植物由来(非可食)の開発も目指す」(三菱ケミカル)という。
一方、旭化成は綿花の種子周りに残る産毛であるコットンリンターを再利用したセルロースナノファイバー(CNF)を生かす。伊アクアフィルと協業し、同社のケミカルリサイクル(CR)ポリアミド6「エコニール」と旭化成のCNFを組み合わせた3次元(3D)プリンター用樹脂材料を開発する。環境性能や強度などを併せ持つ素材として、2025年から先行して日本や欧州、米国で提供を開始する考えだ。旭化成のCNFなどを活用した3Dプリンター向けフィラメントは流動性が高いためノズルを流れやすく、寸法の安定性などが特徴となる。
環境負荷の低減に向けては、エネルギーの効率化も重要な点だ。例えば、自動車の窓枠材料などに使われるエチレンプロピレンゴム(EPDM)関連。三井化学は塗膜防水用途を想定し、耐摩耗性などを高めたEPDM「VNB―EPT」を使った常温硬化EPDMコーティング材などを提案する。耐候性が特徴で、同コーティング材を対象物に塗ることによってメンテナンスの頻度が下がるなど、省エネルギーにつながると期待する。
省エネに寄与する素材では、住友化学が開発する半導体向け窒化ガリウム(GaN)基板もその一つだ。GaN基板にGaNエピタキシャル層を形成するGaNオンGaNエピウエハーなどを通じ、生成人工知能(AI)の普及で電力消費量が増えるデータセンターの省エネ化に貢献する。「縦型でないとできないデバイス構造がある」(住友化学)ため高耐圧・高出力といったニーズに対応できるとみており、大口径化の開発にも取り組んでいる。
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