発売から60年以上…住友化学の農業用殺虫剤「スミチオン」、ロングセラーのワケ
住友化学の農業用殺虫剤「スミチオン」は60年以上も同社の農薬事業をけん引する、いわば同社農薬ブランドの旗艦となる製品だ。水稲や園芸、森林の分野で広範な害虫に有効な点が特徴だ。ピーク時に比べると減りはしたものの、現在でも一定の販売量を維持する。海外でも、ブラジルなどで需要が伸びているという。
藤本博明常務執行役員は1995年ごろに国内の農業用殺虫剤を担当していた当時について「(スミチオンは)あまりに使われている分野が広くて、解析するにも1年くらいかかった」と振り返る。
同社がスミチオンを発売したのは62年。高度成長期で食糧増産に取り組む時代の中、ニカメイチュウが稲作における害虫として問題になっていた。そこでまず登場したのが殺虫剤「パラチオン」だったが、防除の効果が高い一方で人などへの急性毒性が高く、社会問題になっていた。
課題解決に向けて同社が開発したのが、農薬の効果を維持しつつ、低毒性を実現したスミチオンだ。当時「3年あまりで化合物を見いだし、その後2年で市場投入するなど迅速な対応だった」(藤本常務)と技術力を発揮。安心して使える点が評価され、対象分野を増やしながらロングセラーにつながる基盤となった。
一方、近年の変化として念頭に置くのが、2018年の改正農薬取締法における農薬の再評価だ。新たなデータの申請などを通じ、今後もスミチオンを一定の用途で継続して使えるよう対策。スミチオンの持続可能性を追求する。(山岸渉)
日刊工業新聞 2024年11月14日