農薬ブランドの象徴「スミチオン」…住友化学、次世代も主力への一手
住友化学は農業用殺虫剤「スミチオン」の持続可能な対応に乗り出す。念頭に置くのが、環境への影響を含めて安全な農薬を評価する国の新たな制度。これに対応するため、新たなデータの取得などに取り組む。今後、具体的な対応を詰めるが、スミチオンの需要は底堅いとみる。60年以上も農薬事業を支えてきた製品を、次世代にも引き続き供給する考えだ。(山岸渉)
「(農業関連の)アグロ事業の旗頭となる剤だ」。アグロ事業部を担当する住友化学の藤本博明常務執行役員は、スミチオンをこう位置付ける。食糧増産に向けて、害虫対策などが重要とされていた時代の1962年に発売した。
スミチオンは従来品に比べ、人体への悪影響が少ないことが評価されるなどして普及。併せて、農薬としての用途も増やしてきた。ピーク時に比べると使用量は減ってきたものの、長年一定の需要は維持する。同社の農薬ブランドの象徴とも言える製品だ。
近年の変化として念頭に置くのが、2018年の改正農薬取締法における農薬の再評価だ。全ての農薬について、最新の科学的知見に基づき定期的に安全性などを再評価する仕組みだ。
21年から販売規模の大きな製品から順次評価が進んでいるとみられる。同社でも新たなデータの申請などを通じ、スミチオンを一定の用途で継続して使ってもらえるよう対策を講じる構えだ。詳細は今後詰める。
藤本常務執行役員は「再評価を乗り越え、かなりの分野で使ってもらえる剤にしたい。(スミチオンも)5年以内には提出期限が来るのではないか」と予測する。
住友化学は農薬事業を成長ドライバーの一つと捉える。スミチオンだけでなく、殺菌剤「インディフリン」を計6カ国で市場投入したほか、新規除草剤「ラピディシル」がアルゼンチンで農薬登録を取得するなど製品群を強化している。
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日刊工業新聞 2024年10月16日