中小企業への「しわ寄せ」懸念…大企業の働き方改革、政府が監視強化
大企業の働き方改革の「しわ寄せ」が中小企業に及ばないよう、政府が監視を強めている。これまで時間外労働の上限規制の適用が猶予されてきた建設業や運送業も2024年4月から対象となり、企業は従業員の勤務時間管理を厳格化している。その影響が無理な短納期発注や仕様変更などで、立場の弱い下請け企業に及ばないよう適正取引を呼びかけている。
中小企業は少ない人員で取引先の要望に応えるため、残業や休日出勤で対応するケースが少なくない。サプライチェーン(供給網)全体で適正取引を進めなければ、中小の働き方改革が置き去りになる可能性がある。そこで、厚生労働省は過重労働の防止、経済産業省や公正取引員会は下請け取引適正化やコスト増加分の価格転嫁の観点から対策を進めるよう集中的な周知を行っている。
具体的には、週末に発注し週明け早々の納入、あるいは就業後に発注し翌朝の納入を求めるといった過度に短い納期を求めることや発注内容の頻繁な変更などを問題視している。やむを得ず、短納期での発注や急な仕様変更を余儀なくされる場合には、残業代など適正なコストを発注側が負担することを社内で周知、徹底するよう求めている。
取り組みを徹底するため、厚労省は都道府県や労使団体へ協力を依頼。全国の労働局や労働基準監督署でも相談に応じている。また、中小への「しわ寄せ」を生じさせることが懸念される大企業に対しては、労働局が実際に訪問し、見直しを要請するという。
建設業では発注側による短い工期の設定、運送業では長時間の荷待ちなどが問題になっている。
日刊工業新聞 2024年11月13日