「工業用水」の重要性に焦点、経産省が安定供給へ一手
国内投資の活発化に伴い、工業用水の重要性に焦点が当たっている。半導体関連の立地で注目される熊本県に限らず、安定供給確保は将来の産業立地に不可欠。カギを握るのは工業用水事業者の経営力だ。使用量に応じた適切な施設規模への見直しや、人件費や資材費上昇の料金転嫁の裏付けとなる投資計画の策定など、取り組むべき課題は多い。経済産業省は2025年3月をめどに事業者向けの指針を改定し、こうした項目を盛り込む。インフラの強靱(きょうじん)化を後押しする。
経産省が改定するのは「工業用水道施設更新・耐震・アセットマネジメント指針」。施設更新時の契約水量や施設規模の見直し、今後の水需要を考慮した上で、収益基盤確保策を踏まえた計画策定の必要性などを盛り込む方針だ。策定を設備投資補助事業の要件にする可能性も検討する。
経産省は足元から50年度までで更新に必要な年間平均投資額は、過去10年間の倍となる約1000億円に増えると試算する。しかし8割の事業が、更新や耐震化対応などに向けた資産維持費を料金に組み込んでいない。「料金改定を実施していない」ことや「将来の改良工事に係る負担を現行料金に含めることはユーザーから理解を得られない」ことなどが理由として挙がる。
根底にあるのは制度の硬直化と、工業用水事業者、自治体の企業誘致担当部局、ユーザー企業が三すくみ状態にあるという課題だ。
工業用水は契約当初の水量を基に料金を固定するケースが大半。企業の節水努力などにより水の使用量は年々減っているが料金には反映されず、単価は上がることになる。また、将来の企業誘致を想定し、足元の給水能力が余剰でも容易に規模を縮小しにくいという問題もある。
経産省では使用水量に応じた料金制度のあり方や、企業が撤退した際の施設コスト負担のあり方、投資計画に裏付けられた更新原資の確保、企業誘致計画と水道施設規模の擦り合わせなどについても検討していく方針だ