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アップルも投入…AIパソコン相次ぐ、部品メーカーに恩恵は?

アップルも投入…AIパソコン相次ぐ、部品メーカーに恩恵は?

iMacはチップ「M4」を搭載し負荷のかかる作業を円滑に行える

IT大手がパソコン(PC)側で人工知能(AI)処理を行うAIPCを拡充する。米アップルは生成AI「アップルインテリジェンス」の活用を想定したPCを8日に発売するほか、中国レノボグループや米HPなども製品をそろえる。一方、高性能な中央演算処理装置(CPU)などの搭載による価格上昇は引き続き課題だ。さらに価格競争にさらされる部品メーカーもあり、PC市場回復の好影響が裾野まで広がるかは不透明だ。(阿部未沙子)

アップルは10月末にPCの新製品を続々と発表した。「iMac」や「Mac mini」「MacBook Pro」だ。作業を円滑にする新たなCPUを搭載。例えばiMacは半導体「M4」を搭載し、アップルインテリジェンスに対応する。

米IDCの調査によると、7―9月のPCの世界出荷台数は首位がレノボで、HP、米デル・テクノロジーズ、台湾エイスースとアップルが続く。アップルの新製品投入により、AIPCの普及が期待できる。

ただ、PCの価格上昇は引き続き懸念材料だ。例えばデル・テクノロジーズのXPS13を比べると、旧機種の発表当初の想定価格が消費税込みで22万9980円からだったのに対し、新機種は同26万円からだ。

またMM総研(東京都港区)が3月に発表した日本国内でのPCの平均単価によると、2023年は11万4499円と22年に続き10万円を上回った。MM総研の中村成希取締役研究部長は「CPUの高性能化などに伴い、製品の単価が上昇している」とし、AIの活用が多様化することでカメラやマイクに対しても性能向上が求められ「全体的に部品の値段を押し上げる」とみる。

他方、PCに搭載する部品の値下げ傾向もみえる。例えばPCやサーバー向けのIC(集積回路)パッケージ基板を生産するイビデンの河島浩二社長がPC向けについて「価格競争が激化している」と話すように、値下げの動きが出ているようだ。また半導体・電子部品商社、コアスタッフ(東京都豊島区)の戸沢正紀社長は「AIPCが予想以上に不調だったため、部品が余って価格が下落している可能性がある」と指摘する。

ただ、米IDCの調査では、24年の世界のPC出荷台数を前年比2%増の2億6540万台とし、PC市場の回復を予測する。MM総研の中村氏はアップルの新製品について「(デスクトップPCといった)幅広い製品での『AIPC化』を訴求している」と印象を述べる。AIPCは将来的にはPC市場の需要回復を後押ししそうだが、恩恵を受ける部品メーカーは限られそうだ。


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日刊工業新聞 2024年11月7日

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