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アップル・マイクロソフト…「エッジAI」開発加速、端末買い替えに期待

アップル・マイクロソフト…「エッジAI」開発加速、端末買い替えに期待

アップルインテリジェンスは重要な通知を優先して表示する

IT各社からの生成人工知能(AI)の発表が相次ぐ。米アップルは、端末でAIを動かす「エッジAI」を実現する独自の生成AIを発表。米マイクロソフトはエッジAIのパソコン(PC)を公開した。新製品の登場は部品を供給するサプライヤーにとっても好機になり得るが、エッジAIに対する需要の高まりには時間がかかる見込み。また、生成AIをめぐっては個人情報の保護といった課題が存在し、エッジAIが課題解決の一助になりそうだ。(阿部未沙子)

生成AIは米グーグルやマイクロソフトなど各社が開発を進めており、アップルの生成AI「アップルインテリジェンス」は文章の要約や優先する通知の表示、文章や写真に基づいた絵文字の作成などを行える。

同社は生成AI分野での出遅れを指摘されてきたが、MM総研(東京都港区)の横田英明取締役副所長は「やっと(他社に)追いつくことができたのではないか。端末とシリコンチップ、ソフトウエアまで一気通貫でつくれる企業ならではのサービス展開につながるだろう」とアップルの強みを認識する。

アップルインテリジェンスはソフトウエアであるため「アップルインテリジェンスそのものから(サプライヤーである)メーカーが恩恵を得る機会は少ない」(横田氏)との予想がある一方、買い替えの促進によるサプライヤーへの好影響を期待する声もある。ただ、アップルインテリジェンスは今秋から英語に対応したテスト版が米国で使えるようになり、対象機種も限定されている。さらに、日本語を含む他の言語は25年にも対応する見込みのため、日本国内で需要が高まるのはまだ先になりそうだ。

生成AIの活用はスマホだけでなくPCでも広がる。端末に高性能なNPU(ニューラルネットワーク・プロセッシング・ユニット)を載せることで、端末側でAIの推論を行う「コパイロット+PC」だ。

コパイロット+PCは40トップス(毎秒40兆回の計算)以上のNPUを搭載し、AI推論を一段と強化したもの。例えば、デル・テクノロジーズ(東京都千代田区)が18日に発売した「XPS 13」はコパイロット+PCの一つ。NPUは最大45トップスだ。

デル・テクノロジーズのコパイロット+PC「XPS 13」

ただ、コパイロット+PCの本格的な採用には時間を要しそう。MM総研の中村成希取締役研究部長は、一般的なPCと比べ高価格な点と、米クアルコムのチップを採用している点を指摘する。「クアルコムのチップはこれまで法人で採用されてきた実績があまりない」とし「各企業が普段使うソフトが(正常に)動くかどうかを確かめる必要がある」と説明する。

同時に、生成AIをめぐっては個人情報の取り扱いが懸念されている。実際、アップルがアップルインテリジェンスを発表した会議の場では、登壇者からプライバシーの保護を重要視する旨の発言が目立った。生成AIが早期浸透するには、IT各社がクラウドに情報を送らずに端末内で処理するエッジAIの存在を消費者に認知してもらい、いかに不安を払拭できるかにかかっている。


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日刊工業新聞 2024年6月20日

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