固定電話に携帯網活用…NTT法見直し、報告書案の全容
提供責務負う地域を限定へ
NTT法見直しを議論する情報通信審議会(総務相の諮問機関)の三つの作業部会で報告書案が出そろった。NTT法は自民党が2025年をめどに廃止を目指すとしていたが、今回の議論では一部の修正があるものの維持される可能性が高まった。ただ、携帯電話網を用いた固定電話をユニバーサル(全国一律)サービスにすることが適当とする文言が入った。時代に合った通信政策の実現に向け、さらなる議論の深掘りが求められる。(編集委員・水嶋真人)
NTT法では電話を全国あまねく提供することをNTTの責務とする。22年の電気通信事業法の改正で固定電話と固定ブロードバンドがユニバーサルサービスを担っている。NTTは老朽化により銅線を用いた固定電話用メタル回線設備を35年に縮退する方針を示す一方、ユニバーサルサービスについて携帯通信を軸とした制度とするよう求めた。
これに対し、報告書案では、30年ごろでもメタル固定電話の利用者数が約730万残るとして「当面は固定電話の単体利用をユニバーサルサービスとして保障することが適当である」(総務省事務局)とした。
一方で、効率化やメタル回線設備の縮退促進の観点から「モバイル網のさらなる活用が必要」とも記載した。特に携帯電話網を活用したNTT東日本、NTT西日本のワイヤレス固定電話について「提供地域を不採算地域に限定する規制の緩和が適当」(同)とする。携帯電話網を活用して携帯大手が提供するモバイル網固定電話についても緊急通報時の住所情報提供を可能にするといった一定の技術基準を検討した上で「ユニバーサルサービスに位置付けることが適当」(同)とした。
モバイル網固定電話がユニバーサルサービスに追加されれば、複数事業者が連携したエリアカバーが可能になる。NTTが他事業者の提供地域でもサービス提供を担うNTT法の「電話のあまねく提供責務」は、提供事業者がいない地域に限ってサービス提供責務を負う「最終保障提供責務」に見直される見通しだ。
NTTはメタル設備縮退後の35年に想定する固定電話契約数(約500万回線)を対象にした新たな電話サービス方式の収支について、電話を全てNTT東西の光回線で提供した場合の年間赤字額は770億円、光回線電話とモバイル網固定電話を合わせて国内カバー率を100%にする方式では同30億円に減ると試算している。
NTT経営企画部門の城所征可統括部長は「既存の携帯通信エリアを最大限活用することでコスト効率が向上する」と指摘する。固定電話の赤字補填といった国民負担を減らすためにも固定電話の携帯電話網活用に向けた議論が急がれる。
日刊工業新聞2024年10月25日
通信線基盤、維持継続を NTT法見直しWGが報告書案
日刊工業新聞2024年10月18日
NTT法見直しを議論する情報通信審議会(総務相の諮問機関)の公正競争ワーキンググループ(WG、作業部会)は17日、NTTが日本電信電話公社から引き継いだ電柱や管路などの通信用線路敷設基盤について、NTTが引き続き適切に維持するべきだとする報告書案を示した。
一方、NTT東日本、NTT西日本という分離体制を引き続き維持すること、市場支配的事業者であるNTT東西やNTTドコモがNTTグループ内企業と合併することを審査できるようにすることが適当とした。
ユニバーサル(全国一律)サービスWGも同日、報告書案を示した。ユニバーサルサービスの保障対象は現時点で引き続き固定利用が適当と指摘。携帯電話をユニバーサルサービスに位置付けることについては引き続き検討を行うべきだとした。
情通審WG、NTT法見直しで報告書案 外資総量規制を維持
日刊工業新聞2024年10月21日
NTT法見直しを議論する情報通信審議会(総務相の諮問機関)の経済安全保障ワーキンググループ(WG、作業部会)は、外国人の議決権保有割合が3分の1以上になることを禁止するNTTへの外資総量規制の維持が適当だとする報告書案をまとめた。
報告書案では、NTTは日本電信電話公社から引き継いだ電柱や管路などの通信用線路敷設基盤を持ち、国内の通信インフラ全体を支える公共的な役割を担っていると指摘。「外国の影響力を排除することは重要」とした。
NTTが主張した同社以外の主要通信事業者に対する外資総量規制は、対日投資促進政策を阻害する懸念から「慎重な検討が適当」との言及にとどまった。個別投資審査の強化も、審査終了まで株式取得が認められず投資家への影響が出るとして「丁寧な検討が必要」とするにとどめた。