伊藤忠・住商…商社大手が再エネで攻勢かける
脱炭素・安定供給両立目指す
大手商社が再生可能エネルギー事業で攻勢をかけている。伊藤忠商事は米国で、土地の確保や電力系統への接続といった太陽光発電所の設計業務を推進。住友商事は再生エネの大量導入で顕在化している九州地域の需給調整力の不足に対応するため、JR九州と連携して蓄電所開発を進める。上流の再生エネ開発から下流の系統整備に至るまで、総合商社の産業ネットワークを生かして脱炭素需要の取り込みを狙う。
伊藤忠は米国で3カ所の大型太陽光発電所の設計を完了し、再生エネ事業を手がける米アダプチャーリニューアブルズに土地などの資産を売却した。日本企業が同国で、許認可の取得や長期売電先の確保を含め発電所開発に必要な業務を一貫して手がけたのは初めてという。発電所の建設や電力供給はアダプチャー社が行う。
3案件の合計発電量は米国の標準家庭で約7万2000世帯の消費量に相当する33万3000キロワットに上る。伊藤忠はこのほか、米国で合計400万キロワット規模の太陽光発電所の設計案件を有し、発電所の運転・保守の事業も展開している。電力事業者の負担を抑えるサービスで再生エネの開発需要を取り込む。
住友商事とJR九州は熊本市とカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現に向けた連携協定を締結した。太陽光発電設備の導入拡大のほか、災害時を含め電力需給の調整役となる系統用の蓄電事業を進める。住友商事とJR九州は、再生エネ設備の先行導入により出力制御が頻発する九州エリアで、鉄道沿線や遊休地を使った蓄電所開発を推進しており、「地域と共生する社会基盤構築に取り組む」(住友商事)とする。
国内の再生エネ発電で最大級の容量を持つ豊田通商は、北海道で風力発電と蓄電・送電をセットにした総事業費2300億円の電力網を2023年に稼働させた。今後は「(発電設備の拡大だけでなく)最適なタイミングで系統に効率的に電気を供給する体制も作っていく」(貸谷伊知郎社長)とし、北海道の開発モデルの横展開を狙う。
再生エネの需要は今後も拡大が見込まれる一方、発電所の設計から運用・蓄電に至るまで総合的な開発の推進が必要となる。エネルギーの安定供給と脱炭素の両立に向けて、事業創出力のある総合商社の再生エネ開発の競争が活発化しそうだ。