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半導体新材料に道…京大が高速・高精度バンドギャップ予測手法を開発した意義

半導体新材料に道…京大が高速・高精度バンドギャップ予測手法を開発した意義

ニューラルネットワークによる半導体材料開発のイメージ

京都大学の田辺克明教授らは、電子・光デバイスの性質を決定づける物性値である半導体のバンドギャップを高速かつ高精度に予測できる手法を開発した。人の脳内の神経回路網を数式で模倣したニューラルネットワークを組み合わせたアンサンブル学習を活用。化合物の組成だけから予測可能で、新規半導体材料の開拓に有用な手法と期待される。

「勾配ブースティング回帰」「条件付き敵対的生成ネットワーク」「メッセージパッシングニューラルネットワーク」を組み合わせ、従来の最良モデル比で5・7%精度を向上させた。実測値に対して平均絶対誤差0・348電子ボルトを示し、無機半導体材料のバンドギャップについての既存の機械学習モデルの中で最高となる予測精度を達成した。計算負荷は軽く、一般的なノートパソコンでも数時間内にできた。

バンドギャップは半導体材料中に電流が流れ始める電圧値の目安となる物性値。元素の組成や原子の配列の構造(結晶構造)から半導体材料のバンドギャップの値を計算する従来の代表的な方法に密度汎関数理論に基づく第一原理計算などがある。

しかし計算コストが高く、結晶構造を知り指定する必要があり、基本的に絶対零度の温度での物性予測のため実用に則した常温周辺での精度に難があるなどさまざまな課題があった。

日刊工業新聞 2023年9月12日

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