「カラーラップ」家庭に照準、人気出始めた背景に「発想の転換」
信越ポリマー子会社のキッチニスタ(茨城県筑西市、白方浩輔社長)が製造・販売するカラーラップフィルムの需要が戻ってきた。主な供給先であるホテルや飲食店での需要がコロナ禍から復活しているのが押し上げ要因になっている。一方、用途開発の一環で消費者向け製品として2022年に発売した「デコラップ」の訴求にも注力している。業務用は破片を発見しやすいために普及したが、発想を転換し、家庭などに図画工作用としても広めようとしている。(渋谷拓海)
外食産業では、半透明の青いカラーラップフィルムを使うことがある。破片が万が一にも食品に混入した場合、発見しやすいためだ。三原色の中でも青色は食品との相性が特に悪く、混じると目立つ。人間の感覚を利用し、異物混入防止に役立てている。
キッチニスタのカラーラップフィルム製品群は、塩化ビニール樹脂を用いるためよく伸びてくっつきやすい。同社によると、外食産業向け塩ビ小巻ラップは国内トップシェア。20年の新型コロナウイルス感染症の影響で売り上げが一気に落ち込んだが、21年から徐々に回復し、コロナ禍前の水準に達した。
ただ、ラップフィルムは市場規模の急拡大が見通しにくい。白方浩輔社長も「食品をラップで包むのは日本の文化。海外展開しようにも、現地当局の規制があり、そう簡単ではない」と指摘する。
こうした中、業務用に強い同社が満を持して発売したのが「デコラップ」だ。製品サイズは幅22センチ×長さ20メートルとし、主力の青に黄と赤を加えた3色で展開する。電子商取引(EC)サイトを中心に販売しており、消費税込みの小売り価格は1本300円前後。子どもがいる家庭や施設に対し、弁当などに手軽に彩りを添えられるアイテムとして提案している。
一般家庭になじむよう、箱のデザインには業務用以上にこだわった。また従来通りの「食品包装用」と併せて「図画工作用」とあえて記載。会員制交流サイト(SNS)の「インスタグラム」でデコラップの活用法を発信し、時には従業員が幼稚園などを訪れるなどして地道に訴求している。白方社長は「それほど伸びるマーケットではないはずなのに」と話す。人気が出始めているようだ。
キッチニスタの製品群はかつての「日立ラップ」に起源を持つ。直近では昭和電工マテリアルズ(現レゾナック)が食品包装ラップフィルム事業を継承するためにキッチニスタを設置、21年に信越ポリマーが全株式を取得した。
生産現場では、信越ポリマーとキッチニスタの間で生産効率化の取り組みが進む。小巻きをキッチニスタ筑西工場(茨城県筑西市)に、太巻きを信越ポリマー東京工場(さいたま市北区)にそれぞれ集約。9月に再編が完了する見通しだ。吉田聡経営管理部長は「小巻ラップは巻く機械が同じ。規模の効果を生かしたい」と意気込む。
市場環境は楽観視できないが、製販の体制を整え、新用途で業績拡大を図っている。