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警備員の担い手確保を急ぐ…セコム・ALSOK、イメージ改善・支援制度拡充

警備員の担い手確保を急ぐ…セコム・ALSOK、イメージ改善・支援制度拡充

セコムが都内に設けた職業体験施設。契約企業の事務所を模した設備の前で、警備員の業務について社員から説明を聞く学生(イメージ)

施設にセンサーを設置し、異常検知時に警備員が駆けつける「機械警備」を主力とする警備会社が、若手人材の獲得に向けたイメージ改善や早期離職の防止に向け、支援制度の拡充を推進している。セコムは学生を主な対象にした職業体験施設を都内に新設し、綜合警備保障(ALSOK)は若手社員向けの奨学金代理返還制度を導入した。製品・サービスのデジタル変革(DX)を進める一方、全国展開する機械警備を支える警備員の担い手確保を急ぐ。(地主豊)

セコム、業務体験施設 学生・内定者の不安軽減

セコムは新入社員が抱きがちな入社前の不安や悩み、入社後のギャップを軽減しようと、選考前を含む採用活動のメニューを充実させている。その一つが6月に開設した、警備員の業務を再現した職業体験施設だ。機械警備を契約する事業所をはじめ警備員の待機所、司令塔に当たるコントロールセンターを模した設備がそろう初めての施設となる。学生や新卒・中途採用の内定者だけでなく、人材エージェントなど事業者向けにも活用する計画。年間500人の利用者数を目指す。

職業体験では、事業所に設置されたセンサーの異常検知からコントロールセンターへの通報、指示を受けた警備員が現場に駆けつけて点検を行い報告するまで一連の流れを再現。防刃・防弾ジャケットの着用や手荷物の携行など実際の警備員とほぼ同等の動きが体験できる。現場で警備員の模擬演習などを行うことが難しいため、従来は営業など一部業務の体験にとどまっていた。

警備員の仕事は日常生活で目にする機会が少なく、「学生にとってイメージしにくい。実際に体験して身近に感じてもらうことが狙い」(田村浩章人材採用部長)という。学校の夏休みに合わせて7月下旬以降は高校生の受け入れを開始し、反応は上々だという。先輩社員の声をまとめた独自の紹介動画や、ゲーム形式のクイズが奏功している。施設担当の人材採用部・竹内祐樹氏は「夜勤がきつい、運動部の実績が必須といったイメージや不安を払拭したい」と思いを話す。施設利用者の増加に伴い、どれだけ採用につなげられるかが注目される。

ALSOK、奨学金代理返還 ワークライフバランス向上

ALSOKが23年に開いた24年度春入社の新卒社員向け懇親会

ALSOKは未来を担う若手社員の支援を目的に、入社5年目までの社員向けの奨学金代理返還制度を10月に導入する。日本学生支援機構などの貸与奨学金を利用する社員が対象。月額は最大1万8000円で期間は最長5年間、合計で最大108万円を同社が代理返還する。「多くの学生が奨学金を利用しており、金銭的な負担軽減は大きい」(大野貴廉採用部長)と背景を説く。新卒社員に限らず、通年採用の中途社員や一定条件を満たす既存社員にも対象を広げている。

導入の背景には、基本給を底上げするベースアップを2024年度まで11年連続で行うなど、社員に対するワークライフバランス向上の取り組みがある。その考えに基づき、新卒の内定者向けに福利厚生制度の一部を入社前に利用できる仕組みを23年度に始めた。飲食店や物販店、リゾートホテルなどの対象店で割引など特定のサービスが受けられる。

内定者向けの施策として、同社は若手の先輩社員を交えた座談会を年2回開く。コロナ収束を受け、食事付きの懇親会や個別相談などのメニューを23年度に拡充した。内容を変えながら2カ月に1回程度のペースで交流の場を企画し、学生との継続的な接点を増やしている。「先輩社員と接して日々の様子や出来事を聞き、仲間に加わりたいと思ってもらえることが多い」(大野部長)と手応えを示す。

警備員の人手不足が続き、人材確保の競争は激化している。入社前後で、おのおのの生活ステージや考え方に合わせた柔軟な施策が今後も求められそうだ。

日刊工業新聞 2024年08月16日

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